第5話 子ども達の笑顔

落ち始めた夕陽の光が、ネロの顔を切なげに照らし出す…-。

ネロ「大人は……嘘つきで、強欲で、愚かな生き物だ。 許さない……許さない……許してたまるものか!」

悲痛な叫びが耳に残り、私の胸を締めつけ続ける。

○○「ネロ、私は…-」

言葉を探すものの、彼にかけるにふさわしいものがどうしても見つからない。

○○「私に……できることは」

ネロ「必要ない。 今も自分達で何とかやってる。大人を介入させればまた、昔と同じことが起こるだけ」

大人を拒絶するネロは、当然、私のことも憎むべき対象だと思っている……

そう考えると、ひどく哀しかった。

○○「……私も」

ネロ「……」

○○「私も……憎い?」

思い切って問えば、深紅の瞳がいっとき見開かれ、それから項垂れるようにうつむいた。

ネロ「……。 あんたのことは……まだ、わからない」

○○「え……?」

ネロ「あ……」

しまったというように、ネロがはっきりと目を見開く。

ネロ「に、兄さんと同じだよ」

(お兄さんと?)

○○「ネロ、お兄さんって?」

ネロ「……俺の兄さん。 世間一般的にはきっと大人なんだろうけど……大人とか子どもとか兄さんはそういうんじゃないんだ」

○○「……?」

ネロ「わからないなら、いい」

その日それ以上、話を続けることは出来ず、私達は黙ったまま城へと向かったのだった…-。

……

翌日、チルコの街へ一人出てみることにした。

お手玉で遊んだり、操り人形で遊んだり……

子ども達が戯れる微笑ましい光景に、知れず笑みがこぼれる。

(そういえば……ネロ達はどうしてサーカスを?)

すると……

男の子1「あっ! ネロ様のお友達だ!」

女の子1「ほんとだ! ねえねえ、お姉ちゃんも一緒に遊ぼう!」

女の子2「わたしのお人形、貸してあげるね!」

○○「ありがとう」

女の子2「ねえ、お人形さん動かして! ネロ様みたいに!!」

○○「うん、やってみるね」

けれど、人形の糸は私の意志に反して絡まってしまい……

○○「あ、あれ……? すごく難しいね」

(子ども達は、皆楽しそうに扱えてたのに……)

その時……

??「うわ……信じられないくらい不器用」

○○「え……?」

子ども達「ネロ様ー!」

ネロ「貸して」

ネロは、操り人形を私の手から取ると、とても器用な手つきでぺこりと頭を下げさせた。

○○「わあ……!」

子ども達が、もっとしてほしいとせがむ中、ネロは微笑みながら操り人形を始める。

ネロ「『ほら兄さん……これでケーキはぴったり同じ大きさだろう』『同じじゃないよ、お前の方が少し大きいじゃないか。もう一度切り分けよう』『もう何度目だろう。ケーキがだんだん小さくなっていくよ』」

○○「すごい……!あっ、かわいい……!」

私も、子ども達と一緒になって操り人形に魅入って、楽しんでしまっていた。

すると……

ネロ「……子どもみたいな奴……」

そんなネロの小さなつぶやきが、私の耳に届けられた…-。

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