第2話 彼のサーカス団

太陽の光を浴びて、小瓶の中の液体が不思議な色を煌めかせる…-。

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??「……大人なんか、みんな腐ってる」

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草原に吹く柔らかな風を感じながら、私はあの男の子の後を追った…-。

そうして、しばらく…-。

??「……あんた、どうしてここにいるんだ?」

近くの街へとたどり着いた私は、とあるサーカス団の所有するテントの中で男の子に再会できた。

??「まさか、俺をつけてきたのか?」

男の子が、私を訝しげに見つめる。

○○「探していたんです。これを落としたみたいだったので」

??「それは……!」

男の子の前に小瓶を差し出すと、彼は大きく目を見開いた。

??「……。 わざわざ……このために?」

男の子は、恐る恐る私の手から小瓶を受け取る。

○○「はい。渡せてよかったです。 サーカス、って言ってましたよね。合流できたみたいで本当によかったです」

(王子様が自らサーカスをやっているとは思わなかったけど……)

そんなことを思いながら、私は男の子に微笑む。

すると彼は、戸惑うように視線を泳がせ……

??「ネロ……」

○○「え……?」

ネロ「俺はネロだ」

つぶやきに首を傾げると、男の子は怒ったような顔をするけれど……

○○「私は〇〇です」

さっき見た憎悪のような色は、今はその瞳には映っていない。

代わりに注がれるのは、私のことを慎重にうかがうような彼の視線だった。

ネロ「〇〇……」

小さく私の名前を呼んだ後、ネロくんが再び私を訝しげに見つめる。

ネロ「……俺を目覚めさせてくれたことと、これを届けてくれたことについては礼を言う。けど……。 普通……こんなの、放っておくだろ。 ……あんたは変な奴だ」

○○「大切なものかもしれないって思って……」

ネロ「……本当に、そう思って……?」

ネロくんは、さらに怪訝そうな顔をしながら私を見た。

けれど……

ネロ「ん? おい、その傷……」

○○「え……?」

ネロくんが指差した方の頬に触れると、小さな痛みが走った。

(もしかして、さっき林の中を通った時についたのかな)

○○「大丈夫です、これくらい。じゃあ、私はこれで…-」

ネロ「待て」

立ち去ろうとした私の背中に、ネロくんの声が届く。

ネロ「……来い。医者のところに連れていってやる」

○○「あっ、ネロく…-」

私の言葉を最後まで待つことなく、ネロくんはテントの外へと出て行ってしまった。

……

医者「はい、これで問題ないでしょう。 できる限り、傷が残らないように手当てしておきましたよ」

○○「ありがとうございます」

お礼を言うと、お医者様が優しく微笑む。

その笑みには、まだどこかあどけなさが残っていた。

(ネロくんと同じくらいの年かな)

ネロ「悪かったな、忙しいのに」

医者「ネロの頼みなら、いいさ」

彼の元には先ほどから子ども達が大勢詰めかけていた。

(さっきから、子ども達の姿しか見ないけど……)

○○「ネロくん。あの子達は……?」

ネロ「このサーカス団の奴らだ」

ネロくんは、ぶっきらぼうに返事をした。

(サーカス……)

(やっぱり、練習中の怪我とかも多いのかな)

てきぱきと診察を進めるお医者様の背中を見つめる。

すると……

ネロ「おい、もう行くぞ」

○○「あっ、はい!」

ネロくんに声をかけられ、私は慌てて立ち上がる。

○○「ネロくん、ありがとうございました」

ネロ「……別に。礼なんていい」

私に振り返ることなく、ネロくんはつぶやくようにそう答える。

○○「でも、子ども達だけのサーカスなんて驚きました。 大人の人は…-」

ネロ「いない」

○○「え?」

ゆっくりと、ネロくんの顔がこちらを向いて……

ネロ「……来てみるか?」

強い風が、私たちの間を吹き抜ける。

ネロ「情憬の国・チルコへ…-」

ネロくんの声は、どこか不気味な響きをはらんでいた…-。

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