情憬の国・チルコ 虹の国…-。
のどかな草原に、まばゆい光が放たれる…-。
??「……? 俺はいったい……」
現れたのは、道化のような恰好をした一人の男の子だった。
○○「大丈夫ですか?」
??「……!?」
驚いたような顔をしながら、男の子は勢い良く起き上がる。
印象的な赤い瞳が、警戒するように私を見つめて……
??「なんで……大人がいるんだ」
(大人……?)
男の子の言葉が気になったものの、私は彼に目覚めさせた時のことを説明した。
??「トロイメアの姫……そうか、聞いたことがある」
その時、男の子がはっとしたような表情を浮かべた。
??「……サーカスは」
○○「えっ?」
??「サーカスに戻らないと……」
○○「あっ、待って!」
駆け出そうとした男の子へと、思わず手を伸ばす。
すると……
??「触るな!」
〇〇「……っ!」
鋭い声が響き、私は慌てて手を引っ込める。
??「……」
私を見定めるような眼差しには、暗い増悪のようなものが宿っている気がした。
〇〇「あ、あの……」
??「……」
血のように赤い色の目から、次第に鋭さが消えていく。
??「あんたは……悪い大人には見えないけど。 それでもあんたは大人だ」
○○「えっ……?」
彼の口から繰り返し出る、『大人』という言葉……
○○「……私が大人なら、何があるの?」
??「……大人なんかみんな腐ってる」
忌々しく吐き捨てるように言われたかと思えば、今度こそ、男の子は逃げるようにその場を立ち去ってしまった。
○○「……」
遠ざかっていく男の子の背中を、じっと見つめる。
すると……
○○「あれ?」
さっきまで彼が倒れていた場所に、小さな瓶が落ちていることに気がついた。
(きっとあの子のものだよね……?)
瓶の中には、不思議な色の液体が入っている。
私は少しの間、瓶を手にしながら考え込んだ後……
(大切なものかもしれないし……届けた方がいいよね)
男の子が走り去っていった方角へと歩みを進めたのだった…-。