第1話 自由気ままな王子

湯元の国・廻天 宙の月…-。

情緒ある建物が並ぶ街は、湯治に訪れた人々で賑わっている。

(温泉宿がたくさん……なんだか懐かしい感じがするな)

さまざまな病や病気や怪我が治ると評判の、幻の温泉郷……

(急がないと)

指輪になってしまった王子を目覚めさせて欲しいと頼まれて、私はこの国へとやってきていた…-。

……

従者さんに案内され室内に入ると、金糸の刺繍が施された分厚い布の上に指輪が置いてあった。

神妙な面持ちで、その指輪を見つめている従者さん達は……

(あれ……女性ばかり?)

上品な和装に身を包む従者さん達は皆、女性だった。

(なんだか、不思議な雰囲気……)

○○「……始めましょう」

気を取り直し、胸の前で両手を組もうとすると……

従者「姫様。失礼ながらその前に…-」

従者さんが遠慮がちに、私に布を差し出す。

従者「申し訳ございませんが、目隠しをお願いできますでしょうか」

○○「え?」

きょとんとしてしまう私に、従者さんは懇願するように深く頭を下げた。

従者「どうか……」

○○「わ、わかりました」

首を傾けながらも、私は言われた通りに目を布で覆う。

視界を閉ざされた中、両手を組み、祈りを捧げると……

??「ん……」

従者「おお! 王子が……!!」

??「……! 元に……戻ったのか?」

歓喜の中から、男性の声が聞こえてきた。

従者「那由多(なゆた)王子! よくぞ……!」

??「おわっ! 待て待て、俺も今すぐに…-」

○○「……?」

(なんだろう……?)

男性の慌てた声がしてから、しばらく…-。

那由多「や? すまんな! おい、すぐ目隠しを取ってやれ」

目隠しを外してもらうと、いたずらっぽく笑みを浮かべた男性が、布団の上であぐらをかいていた。

那由多「俺の名前は、那由多。この温泉郷・廻天の番頭を務める王子だ」

ゆらゆらと揺れる二本の尻尾に、つい目がいってしまう。

○○「初めまして。私は…-」

那由多「……ふわぁ」

私が言い終わらないうちに、彼は大きなあくびをした。

○○「あ……あの…-」

那由多「あ! すまん。我慢できなくてさ」

人懐っこい笑顔を向けられると、それ以上何も言うことは出来なかった…-。

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