陽の光を浴びてきらきらと光る白い砂浜を、二人で歩く…―。
私達を先導するかのように前をぴょこぴょこと走っていたボニータが、大きな岩場の前で立ち止まった。
ダグラス「ボニータ、どうした?」
ボニータ「キキッ!」
岩の影を覗き込むと、奥へと続く洞窟の入り口があった。
○○「ここは……?」
ダグラス「へえ?早速冒険らしくなってきたね」
○○「ふふ。そうですね」
わくわくした様子のダグラスさんの横顔を見て、思わず笑みをこぼす。
するとそれに気づいた彼が、苦笑し……
ダグラス「行ってみよう」
ダグラスさんに手を引かれ、私は洞窟へと歩みを進めた…―。
薄暗い洞窟の中はひんやりと涼しく、少し肌寒いほどだった。
ダグラス「寒いかい?」
私が震えたのに気づいたのか、ダグラスさんが顔を覗き込む。
(あんまり心配させるようなことは言わない方がいいよね……)
○○「いえ、大丈夫です」
ダグラス「そう?でも震えてるから、よければこれを使って」
ダグラスさんが薄手の羽織を肩にかけてくれる。
○○「用意してくれてたんですか?」
ダグラス「寒かったり雨が降ったり、島ではいろいろなことがあるからね」
冒険慣れしたダグラスさんらしい気遣いに、心が温かくなる。
○○「ありがとうございます」
ダグラス「どういたしまして」
そう笑って、ダグラスさんが私の腰に腕を回した。
ダグラス「これでも寒かったら言って」
さっきまで感じていた肌寒さは消え、代わりに彼と触れ合うところが、熱を持ったように温かい。
(ドキドキする……)
高鳴る鼓動を落ち着かせながら歩いた、その時……
ダグラス「……かわいいな。 でも、そんなに緊張しないで」
ダグラスさんが、ぎゅっと腰に回した腕に力を込める。
(……恥ずかしいな)
すべてを見透かしたような彼に、そんな気持ちを抱きながらしばらく進むと、奥の方に小さな光が見えてきた。
○○「出口でしょうか?」
ダグラス「そうだね。残念、この洞窟にはお宝は隠されてそうにないな」
笑顔で肩をすくめるダグラスさんに、私は首を傾げる。
○○「お宝?」
ダグラス「ああ。この島は神々の住処だなんて言われていてね。 特別なお宝が隠されてるって噂が広がって、ここにたどり着く海図を必死で探してる奴らもいるんだ」
(神々の住処……)
美しい空も海も、この神秘的な洞窟も……島を流れる空気は確かにどこか現実離れしていて、神様が住んでいる場所だという話には妙に真実味がある。
○○「どんな神様が住んでるんでしょう?」
ダグラス「言い伝えだし、諸説あるけど……。 たとえば珊瑚を守る女神、海の始祖と言われる神、海と大地を守る神……」
(海と大地を守る神……)
その言葉に、私はダグラスさんの横顔を見上げた。
ダグラスさんは海賊の国・アンキュラの王子として、陸と海の治安を守っている。
(その神様とダグラスさん、少し通じるところがあるかも)
ダグラス「……っと、危ない。そこ、水たまりになっているから気をつけて」
でこぼこした洞窟の中、ダグラスさんは常に私の足元に注意を払ってくれている。
初めて来た島の冒険でも危なげなく進んで行けるのは、彼の気遣いのおかげで……
○○「ダグラスさん、ありがとうございます」
頭を下げる私に、ダグラスさんが微笑む。
ダグラス「ありがとうって言われるほどのことなんて、何もしてないよ。俺がそうしたいからしてるだけ。 ああ、でも……そう言って俺を見上げる君の顔が、実はすごく好きみたいだ」
軽くウインクされ、私の頬も緩む。
出口が近づくにつれ、明るい光が私達を待っていた…―。
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