ナビット「ねえ! 僕も王子様になりたい! 王子様にしてよ!!」
トロイメアへの旅をつづける私達の前に、ポケットランドからやってきたナビットくんが現れた。
突然の彼の言葉に唖然とする私達だったけど……
○○「えっと、王子様になりたいって、どうして?」
ナビット「えっへん、よくぞ聞いてくれました! アヴィ王子達が来てくれた時、王子様ってすごくかっこいいなあって思ったんだ! だから僕もいつか、王子様になりたいなあって!」
○○「……そうだったんだ」
アヴィ「あのなあ、王子ってのは、なりたいって言ってなれるもんじゃ……」
ルーク「そうですよ、この世界ではそもそも王子と言うのは国を代表する――」
メディ「いやいや、その心意気やよし! ボクが王子とはなんたるかを教えてあげよう!」
ルーク「メディ!? あなたはまたそうやって」
アヴィ「……」
アヴィはもう何も言わず、ただ深くため息を吐いた。
メディ「可愛いウサギくんが別の世界から身一つでやってきたんだよ? 彼の願いを叶えてあげるのも王子としての大切な使命じゃないか!」
ナビット「わーいっ! やったー♪ 僕、頑張ります!!」
ナビットくんは、辺りを跳ね回りながら喜びで顔をほころばせている。
困惑する私やルークさん、アヴィを差し置いて、メディさんは、腕を組んでナビットくんの前で大きく構えた。
メディ「まず、王子たるもの、芸術的でなければいけないよ!!」
ナビット「……げいじゅつ、てき!?」
メディ「そう、歩くだけで誰もが賞賛するような……。 王子とは、まさに生きる芸術! そう、このボクのような!!」
ナビット「なるほどなるほど……メディ王子の言葉は勉強になるね♪」
ルーク「……」
アヴィ「……」
メディ「こら、キミ達、無言で抗議するのはやめたまえ! ナビットくん、そこの二人は置いておいて、まずはポーズの練習からだよ!」
ナビット「ええと、かっこいいポーズ……こう? それともこう!?」
メディ「よし、その調子だよ! さあ、もっと自分に自信を持って!」
ナビット「よ~~~し、この僕の美しさが、爆発する! どーん!」
メディさんの言葉に乗せられて、ナビットくんは次々と芸術彫刻のようなポーズ取りに勤しむ。
メディ「うん、なかなかいい感じじゃないか!」
ナビット「やった! ねぇねぇ♪ ○○お姉ちゃん、どう!?」
得意げにポーズを取って、私の意見を待つナビットくんに……
○○「すごく素敵だと思うよ」
ナビット「わ~~いっ! ○○お姉ちゃんに褒められたよ!」
メディ「さすが、このボクの一番弟子だよ! よし、次に行ってみよう!」
ナビット「はい! メディ王子♪」
メディさんとナビットくんの芸術修業はなおも続く。
○○「どうしよう……」
アヴィ「簡単に終わりそうもないな」
ルーク「口を挟む気力もなくなってしまいました……」
その後もメディさんは芸術への拘りを永遠と語り始めて……
メディ「……つまり、芸術とは、この世のすべて! 芸術こそ至高! そしてボクは芸術の国の王子……その名に恥じぬよう、これからも極めてみせる!」
ナビット「さすが、メディ王子! かっこいいや♪ うーーん……げいじゅつ……げいじゅつは難しいけど……。 でも、僕、わかった気がする! 『こだわり』が大事なんだね♪ これからは、オシャレも、もっともっとこだわらなきゃ!」」
メディ「そう、その意気だよ! ナビットくん」
ナビット「はーい!」
(これでよかったのかな……?)
楽しそうな笑顔を見せたナビットくんに、私はひとまず、ほっと胸を撫で下ろすのだった…―。