刃が夕陽を受けて赤く光る…-。
とっさに、私はゼロさんの前に飛び出してしまった。
ゼロ「〇〇……っ!」
〇〇「……っ!」
右肩をナイフの刃がかすり、ちりっとした痛みが走る。
ゼロ「〇〇……!」
衝撃に倒れ込みそうになると、ゼロさんが私の腰を掴んで抱きとめてくれた。
ゼロ「お前達、自分が何をしたかわかっているのか!?」
私を抱いたまま、ゼロさんが恐ろしい声で怒鳴る。
ゼロ「この方は、トロイメア王家の〇〇姫だ! こんな小国の覇権争いに巻き込んで、ただで済むと思っているのか!?」
男達「〇〇姫……?」
男1「ひとまず、逃げるぞ」
男達は、現れた時と同じように音もなく去っていった。
ゼロ「大丈夫か!? 怪我は……!?」
私を抱くゼロさんの声が、震えている。
〇〇「ちょっと切っただけです、大丈夫ですよ。 それより、今の人達は……?」
ゼロ「ああ……うちの国は王子がたくさんいてね。 側近たちが、跡目争いをしているんだ。 巻き込んで、すまない……」
いつも淡々と言葉を紡ぐゼロさんの声が震えていて、私を心から心配していることが伝わってくる。
こんな状況なのになぜだかそれが嬉しく、思わず笑みをこぼしてしまった。
ゼロ「なぜ、笑うんだ……?」
〇〇「ごめんなさい……でも」
ゼロさんが、困ったように眉尻を下げる。
背中を支えてくれる彼の腕に、そっと手を添えた…-。