月7話 パートナー選定は慎重に

事故現場には、むせ返るような土の匂いが漂っている。

けれど怪我をした人は皆病院へと運ばれ、作業員達の間には安堵の空気が流れていた。

〇〇「あんなに大勢を、この短時間で……」

恐る恐る、隣にいるウィリアムさんを見上げる。

すると、私の視線に気づいたウィリアムさんが涼しい顔で返事をした。

ウィリアム「死神は貴方方より身体能力に長けているようです。私はただ、迅速にこうどうをしたに過ぎない」

〇〇「そんなことが…-」

言いかけてから、ふと疑問がよぎる。

―――――

ウィリアム『死神による人間界への生死に関わる干渉は、ルール違反…―』

―――――

〇〇「あの、どうして助けてくれたんですか?」

思い切って問いかけると、ウィリアムさんは不服そうに眉を寄せた。

少し乱れた襟元を整えながら、深いため息を吐く。

ウィリアム「死神による人間界への生死に関わる干渉は、ルール違反です。 しかし、死神は人間に直接関わり魂を審査をすることが許されている。 今回、私は事故の情報を接触した人間に伝えたに過ぎない。 彼らの救助により命を落とさなかったのであれば、その人間の死亡予定はまだ先なのでしょう。 ただそれだけです」

死神のルールは絶対…-。

それは、そのルールを順守しながらウィリアムさんが提示してくれた、最大限の譲歩だった。

(優しさとは……きっと違う)

それでも、彼が助けてくれたという事実が胸に沁みる。

〇〇「……ありがとうございます、ウィリアムさん」

ウィリアム「感謝など必要ありません」

すぐに紡がれた言葉が、冷たく私を突っぱねる。

(当然だよね。帰る方法を探すって約束したのに、勝手なことして…-)

(もうパートナーとは思ってもらえないかな)

聞きたくても聞けない言葉を、口の中で噛みしめていると…-。

ウィリアム「礼を言っている暇があるなら、早く元の世界へ帰るための調査に戻るべきです」

〇〇「!」

ウィリアム「3時間42分無駄にしてしまいました。この世界でまで、私は残業するつもりはありません」

容赦なく私に背を向け歩き始めるウィリアムさんを、慌てて追いかける。

〇〇「あの、パートナーはまだ、続けられますか……?」

ウィリアムさんは立ち止まり、顔だけで私を振り返った。

ウィリアム「それは貴女の働きぶり次第です。 一人で行った方が効率的だと判断した場合は、外部スタッフ契約の更新を停止させていただきます」

冷たい言葉のはずなのに、不思議と喜びが込み上げてくる。

(今度こそ、頑張ろう)

手のひらを握りしめ、まっすぐに伸びた彼の背中を見つめる。

どんな状況でも、自分の指針を見失わない彼の強さを尊敬した…-。

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