月最終話 交わされた契約

翌日…

ディオンさんに連れられて訪れたのは、地の国にある神殿だった。

ステンドグラスから月の光が淡く注ぎ、神秘的な空気が漂っている。

ディオン「……よく似合ってる」

月明かりに照らされるディオンさんが、微笑みを浮かべる。

私は彼から渡された黒いドレスを身に着けていた。

○○「ありがとうございます。少し、恥ずかしいですけど……」

ディオン「恥ずかしがることはない。俺しか見ていないんだからな」

その言葉で、私は静まり返る神殿の中を見回す。

○○「あの……ここは?」

ディオン「地の神殿だ」

○○「地の神殿……?」

ディオン「天の神殿の伝承は覚えているか?」

○○「はい。確か……。 太陽の光のもと、天の神殿で愛を誓うと愛に溢れた幸せな未来が訪れる……でしたよね?」

私の言葉に、ディオンさんが頷く。

ディオン「もともと、天の神殿と地の神殿は一つだった。 だが、イヴィア建国と同時に二つに分かれたと伝えられている。 ……天の神殿と同様、この神殿にも伝承があってな」

ディオンさんはそこまで言うと、ステンドグラスを見上げ……

彼の燃えるような色をした瞳の中で、月光が妖しげに揺らめいた。

ディオン「月の光のもと、この場所で愛を誓うと愛の契約が成立する」

○○「契約……?」

ディオン「愛を誓った相手以外、二度と愛してはいけない。それを破ると命を奪われるんだ」

○○「……!」

命を奪われるという響きに、ぞくりと震えが走る。

そんな私を見て、ディオンさんが小さく笑った。

けれどその表情は、すぐに真剣なものへと変わって……

ディオン「お前は俺のことが好きか?」

ディオンさんの問いに、私はそっと頷く。

すると次の瞬間、彼がゆっくりと私に長い両腕を伸ばした。

ディオン「ならば……どうして俺が、お前をここに連れて来たかわかるか?」

私の答えを待たずに、彼はきつく抱きしめてくる。

そして……

 

○○「……っ!」

気づけば私は、近くにある椅子へと押し倒されていた。

ディオン「今、ここで誓おう。俺は、お前以外愛さない。 もしその誓いを破ったなら……俺はこの命を差し出そう」

私を見つめる彼の瞳が、炎を宿したように妖しく揺れる。

○○「ディオンさん……」

ディオン「それぐらい、お前に会えて幸せだって言ってるんだ。 だが、契約は一人では成立しないからな」

それまでよりもさらに顔を寄せた彼に、体中が熱くなった。

ディオン「……お前はどうする」

それは肯定しか認めない……そんな意思が感じられる問いかけだったけれど、私の答えは、既に決まっていた。

○○「誓います。私も、ディオンさんだけ…ー」

ディオン「……」

ディオンさんの口元がほころんだかと思えば、彼は私のまぶたにキスを落とす。

ディオン「何があろうと、死が二人を分かつまで……離れない。 俺にはお前だけだ。 俺を受け入れてくれるお前を……一生愛すると誓う」

ディオンさんが、そっと私の唇を塞ぐ。

二度三度と唇が重なり、やがて激しく私を求め始めて…ー。

(ディオンさんの優しさも、悲しみも、寂しさも……全部私が受け止めてあげたい)

唇は首筋を伝い、鎖骨にいくつものキスが降る。

○○「私にも、ディオンさんだけです。 あなたを……一生愛すると誓います」

ディオンさんの大きな手が太ももに触れ、熱い唇が胸元を這って、少しずつ下がっていく。

ディオン「愛してる、○○」

すがるような声に、全身が蕩けるように痺れたその時……

神殿の鐘が高らかに鳴り響いたのだった…ー。

おわり。

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