月SS 別れの痛み

―――――

〇〇『夢の中で、サラさんはすごく悲しそうだった』

ヴィム『……』

〇〇『ヴィムを助けてあげて欲しいって、言ってたの。 だからきっと、サラさんはヴィムが傷つくことを望んでいないと思う』

ヴィム『わかったようなことを言うな! …なら! 俺が許されてるのなら……なんであいつは俺の夢には出てこない……! 俺に言えばいいじゃないか。あんたじゃなく、俺に直接…-』

〇〇『ヴィム……』

ヴィム『……っ!』

―――――

……あの出来事から、数日。

俺の気持ちの整理がつかないまま、彼女を避け続けてしまっている。

ヴィム「はぁ……」

(あの時、〇〇……脅えてたな)

俺の剣幕にびくっと体を震わせる彼女の姿を思い出し、激しく自己嫌悪する。

(だけどまさか、〇〇がサラの夢を見るだなんて……)

(……サラ、〇〇に俺のことを助けてあげて欲しいって言ってたらしいけど……)

(本当に……)

(本当に俺は、許されてるのか……?)

その瞬間、俺のせいで命を落としてしまったサラの姿が頭を過ぎった。

(……っ)

大切な幼馴染を亡くしてしまった悲しみに、心が激しく痛む。

(……違う、な)

胸のあたりを押さえながら、思考を巡らせる。

(仮にサラや、彼女の取り巻く全てのものが俺を許したとしても、関係ない)

(……俺が、自分を許せないのだから)

その場でうつむき、唇を噛みしめる。

するとその時…-。

ヴィム「ん……?」

部屋に、控えめなノックの音が響く。

〇〇「ヴィム、私……」

(〇〇? まさか部屋にまで来るなんて……)

(……けど、今は……)

きっと彼女の用件はサラのことだろうと思った俺は、少しだけ逡巡した後、部屋の扉を開けた。

〇〇「ヴィム…-」

ヴィム「あんた……そろそろ国へ帰らなくていいのか? あと……この間の話は、忘れてくれ。 ……悪かったな」

〇〇「あ、ヴィム……!」

俺は一方的に言葉を紡いだ後、これ以上話すことはないとばかりに部屋の扉を閉める。

(……さすがにあんな態度を取られたら、嫌になっただろう)

(今日、明日中には荷物をまとめて国に帰るだろうな)

そう思った瞬間、激しい自己嫌悪と寂しさに襲われた。

ヴィム「……。 俺が……。 俺がこんな体じゃなかったら、ずっと笑い合っていられたかもしれないのにな」

ぽつりとつぶやいた自分の言葉に、心の痛みが増していく。

(……我ながら、未練がましいな)

(どんなに嘆いたところで運命は変わらない)

(そんなこと、もう嫌ってほど経験してきただろ……)

心の中で自嘲気味に吐き捨て、ベッドへと仰向けに倒れ込みながらそっと目を閉じる。

(……〇〇、あんたとはもう関わることもないと思うけど……)

まぶたの裏に、花畑で見た彼女のまぶしい笑顔が浮かぶ。

(あんたはこれからも、笑いながら生きてくれ)

(……元気で、な)

そうして心の中で彼女への別れを告げた俺は、再び味わう大切な人を失う痛みに、一人耐え続けていたのだった…-。

おわり。

<<月最終話