月7話 一人取り残されて

波の音が、静かに私達の間に満ちている…―。

オリオン「こっちへ来い。 ○○」

名前を呼ばれ、早鐘を打つ胸が今まで以上に騒ぎ始める。

(海の中の神殿に行く方法って……。 キス……するんだよね)

オリオンさんとキスをすると、一時的にオリオンさんの力を分けてもらえる…―。

(その力があれば、水の中でも呼吸ができるようになるけど……)

何も言うことができないまま、胸の高鳴りだけが速くなっていく。

その場から動けない私をからかうような笑い声が聞こえた。

オリオン「期待に応えてやってもいいが」

○○「っ……!」

胸のうちを言い当てられた気がして、顔が熱くなっていく。

オリオン「少し待っていろ」

私の戸惑いを感じてか、オリオンさんはそのまま一人で海へと入っていく。

○○「え?オリオンさ…―」

声をかけ終わる前に、オリオンさんの姿は海の中へと消えた。

(行っちゃった……)

砂浜に取り残され、私は彼へと伸ばしかけていた手を下した…―。

……

なだらかな海の上を、カモメが低空飛行で飛んでいく…―。

その羽ばたきを見つめ、私はオリオンさんの帰りを待っていた。

(オリオンさん……どうしてるかな?)

まだわずかな時間しか経っていないのに、寂しさを感じてしまう。

(あの時、素直にオリオンさんの傍に行っていたら)

ーーーーー

オリオン「こっちへ来い」

ーーーーー

わずかな後悔に心が揺れ動き、私は波打ち際に近づく。

(ちょっとだけ、海へ入ってみようかな……?)

けれどその時、沖の方でオリオンさんが海から顔を出した。

まとわりつく髪を掻き上げ、私の姿を探すように視線を彷徨わせる。

○○「オリオンさん……」

波打ち際に立つ私を見つけ、彼はニヤリと笑みを浮かべた。

オリオン「一人で留守番もできないのか?」

○○「……!」

何も言い返せず、私は押し寄せる波を見下ろす。

オリオン「寂しかったのなら、素直に俺を呼べばよかっただろう」

オリオンさんはこちらへと泳いでくると、砂浜に立ち上がった。

滴り落ちる水もいとわず、彼は私へと手を差し出す。

オリオン「お前もこっちへ来い。そのままで大丈夫だ」

○○「オリオンさん……」

オリオン「今度は迷うな。俺にすべて任せろ」

力強い声に惹かれるように、私は彼の手に自分の手を重ねる。

陽の光が、彼の頬を伝わり落ちる水滴を艶やかに輝かせていた…―。

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