原稿の執筆に入るという藤目さんと別れてから数日後…-。
(藤目さん、執筆進んでるかな?)
滞在している宿で小説を読みながら藤目さんの様子が気にかかっていた。
読んでいた本を閉じ、夜空に浮かぶ月を窓から見上げる。
(綺麗な月……)
小説展へ出かけたり本を読んだりしていたけれど、気になるのは藤目さんのことばかりだった。
(いつ会えるかな……でも、私を待たせているからって焦って書いてもらってもよくないし……)
(帰った方がいい? でも……その前に会いたいな)
月を見上げながらそんなことをぼんやりと考えていた、その時……
藤目「〇〇さん!」
〇〇「藤目さん!?」
待ち焦がれていた声が聞こえて窓の外を覗くと、数日ぶりの藤目さんの姿があった。
藤目「何日もかかってしまい、すみません。 貴方を随分待たせてしまいましたが……ようやく書き上がりました」
〇〇「お疲れ様でした」
藤目「今、下りてこられますか?」
〇〇「はい、もちろんです」
はやる鼓動を抑えながら、私は足早に庭園へと向かうのだった…-。