月7話 ホントの気持ち

とっさにルカを庇って両手を広げたけれど、ティーガ君は拳を振り上げたまま譲らない。

ティーガ「オマエ、こいつを庇うのか!?」

ティーガ君が怒りに任せたように私に怒鳴る。

その剣幕に、気丈に振る舞うので精一杯だった。

○○「そうじゃないけど、もうやめて」

ティーガ君の赤く腫れた拳を見つめる。

その視線に気づいたのか、彼は急いで右手を下ろして後ろに隠した。

(ティーガ君……)

私はルカに向き直り、借りた上着を返した。

○○「ありがとう、助かりました」

ルカ「……なんだよそれ」

ティーガ「○○!帰るぞ」

○○「うん」

ティーガ君と一緒に城へ戻る途中、私達は何も会話をしなかった。

(きっと、怒ってるんだよね)

結局一言も交わすことなく城へ戻り、ティーガ君は部屋の中へと入っていった。

(右手の腫れ、大丈夫かな……)

ティーガ君を追いかけて、彼の部屋のドアをノックするけれど、返事がない。

○○「ティーガ君、お願い……ドアを開けて」

静かにドアが開き、ティーガ君が姿を現した。

ティーガ「なんだよ」

ティーガ君の右手を取り、手の甲を見る。

(やっぱり、腫れてる)

ティーガ「……」

ティーガ君は気まずそうに視線を逸らす。

○○「怪我の手当てだけでも、私にさせて」

私はディーガ君と一緒にベッドの上に腰掛けて、右手の怪我を冷やした。

手当てをしている途中、ルカの言葉が頭をよぎる。

ーーーーー

ルカ「だって、○○ちゃんはトロイメアの姫なんだから、仲良くしておいて損はないだろ?まあ、だからあのコのそれ以外のところに興味はない。あんな田舎臭いコ、ぜんっぜん俺の好みじゃないし」

ーーーーー

(そうだよね……私はずっと、お城や豪華なパーティーとは無縁の、普通の暮らしをしてきたんだから、ティーガ君やルカから見たら、そう思われて当然……なのに、ティーガ君に怪我までさせて)

いたたまれない気持ちがこみあげてくる。

ティーガ「気にするな」

うつむく私に、ティーガ君がぶっきらぼうに言葉をかけてくれる。

○○「……え?」

ティーガ「ルカの言ったことなんか、気にするな。オマエが悪いわけじゃない」

(……ティーガ君)

○○「うん……ありがとう」

ティーガ「まさか、オマエあいつの事が好きなのか?」

○○「え!?そんなんじゃないよ」

ティーガ「じゃあなんだよ」

○○「……ティーガ君に怪我をさせてしまって、ごめんなさい」

ティーガ「オレが勝手にやったことだ。それに、ルカはオレの上に立ちたくて、オマエを利用しようとしたんだ。迷惑かけたな」

○○「……迷惑だなんて」

いつもの笑顔とは違う、ティーガ君の少し苦しそうな表情が、私をますます悲しくさせる。

そのまま視線を地面に落としていると……

ティーガ「……ああもう!」

ティーガ君がじれったそうに、うつむいたままの私の肩を掴んだ。

○○「ティ……ティーガ君?」

ティーガ「思ってること全部言え!聞いてやるから!だから、そんな顔するな」

(ティーガ君……)

○○「私も……ティーガ君に、そんな顔して欲しくないの」

彼の赤い瞳に吸い込まれそうになりながら、胸の内を言葉にする。

ティーガ「○○……」

そう言うと、ティーガ君は少し頬を赤くさせた。

○○「あと……トロイメアの姫としてしか私には価値がないのかなって、悲しくなって。ほら、私この世界に来るまで本当にどこにでもいる普通の子だったし、ティーガ君やルカから見たら……やっぱり私なんて」

私の言葉を聞いたティーガ君は、一瞬目を丸くしたけれど……

ティーガ「なんだ」

やがて、大きなため息を一つ吐いた。

(ティーガ君?)

ティーガ「そんなことで……」

ティーガ君が、私の瞳を真っ直ぐに見つめて、笑みを浮かべた。

ティーガ「いいか、全部オレに任せておけ」

(……ティーガ君?)

自信に満ちたティーガ君の眼差しに、私の胸が音を立てていた…―。

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