月最終話 甘い時間と甘い温もり

オレンジや紫の光が溢れる賑やかな街の中、ティンプラさんの手が、優しく私の頬を滑る…-。

〇〇「ティンプラさん……?」

壊れ物を扱うように頬を撫でる、冷たいその手が愛おしくて……

高まっていく頬の熱が伝わってしまわないか不安に思いながら、私は彼の名前を呼ぶ。

すると……

ティンプラ「今、はっきりとわかりました」

噛みしめるように言った後、ティンプラさんは私をそっと引き寄せた。

ティンプラ「キミの笑顔を見られると、ボクは嬉しい。 キミがボクのことを想ってくれている……そう考えるだけで、愛しさが溢れる。 違和感の正体は、ボクの心。 キミと触れ合うことで形を変える心を、違和感だと捉えていたんです」

〇〇「それって……」

心の在り処に気づいたティンプラさんや、愛しいというその言葉……

そして私を包む腕の感触が、彼への想いをさらに大きくする。

(本当に、ティンプラさんも私を…-)

半ば信じられないような気持ちを抱く私に、ティンプラさんは顔を近づけた。

そしてほんの一瞬、唇を彼の唇がかすめる。

〇〇「今の……」

不意打ちのようなキスに、私は大きく目を見開き……

 

そんな私に顔を近づけたまま、ティンプラさんは小さく笑みをこぼした。

ティンプラ「予定、変更です」

〇〇「予定?」

まるで自分一人がドキドキしているようで恥ずかしくなった私は、必死に心を落ち着かせる。

ティンプラ「本当はこの後、キミをドキドキさせるとっておきの悪戯をしようと考えていました。 ですが……」

〇〇「……!」

ティンプラさんが、今度は私の頬に短くキスをした。

すると落ち着かせようとしていた心は騒ぎ、鼓動は驚くほど速まっていく。

ティンプラ「この方が、もっとドキドキしそうだから」

〇〇「! それは……」

ティンプラさんにも私の鼓動が伝わっているようで、彼はさらに目を細めた。

ティンプラ「ボクの予測は間違っていますか? もし間違っているのだとしたら……。 この心音の理由を教えてください」

いたずらっぽく囁く彼が、再び顔を近づける。

〇〇「待ってください、ここだと人目が…-」

軽く身じろぎながら横目で周りを見るけれど、ティンプラさんは私の言葉を遮るように、再び短いキスをした。

(ティンプラさん……)

降り注ぐキスはとどまることなく、額や耳、髪にも落とされる。

そして……

ティンプラ「お菓子をくれないと、悪戯するぞ。 一部の国の収穫祭では、こう言ってお菓子をねだるそうですね。 この不思議の国でも、取り入れているそうですが……」

優しく純粋な、まるで彼の心を表したかのような澄んだ瞳に、どこか妖しさを感じる光が宿る。

揺らめく光が表す、その感情は……

ティンプラ「甘いお菓子は、ボクには必要ありません。 欲しいのは甘い時間と、甘いキミの温もり……だから、止めてあげられません」

甘い囁きが、私の抵抗を封じる。

かと思えば、再びティンプラさんは私の唇を塞いだ。

ティンプラ「……」

〇〇「ティンプラさ…-」

夜空に浮かぶ月が、彼を妖しく照らし……優しいキスは徐々に深さを増していく。

キスの合間に見た彼の瞳には、先ほどよりも強い光が揺らめいていて……

欲望の感情が浮かぶその瞳は、ぞくりとするほど美しく感じられたのだった…-。

おわり。

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