月7話 幸せの共有

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ティンプラ『よかったです。あの屋台のお菓子は、特においしいと聞いていましたが……。 ボクは食べられません。だから、本当かどうかがわからなくて』

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〇〇「あの……ティンプラさん」

私は聞いていいものかどうか少し迷いながらも口を開く。

〇〇「ティンプラさんが食べられるお菓子はないんでしょうか?」

ティンプラ「残念ながらありません。 口にすることはできますが、おそらく高確率で故障するものと思われます」

〇〇「そうですよね……すみません」

(やっぱり聞かない方がよかったな)

淡々と答えるティンプラさんの姿を見て、傷つけてしまったのではないかと後悔していた、その時だった。

ティンプラ「謝らないでください。 自分が味わった幸せを共有したい。キミは優しいから、そう思ってくれたのだと理解しています」

〇〇「ティンプラさん……」

夜の闇の中、輝くランタンと月の光がティンプラさんを照らしている。

微笑む彼の言葉は、私に喜びを与えてくれたのだけれど……

同時に、少しの引っ掛かりを覚えた。

〇〇「ありがとうございます。そんなふうに言ってもらえて嬉しいです。 でも……。 ティンプラさんに、おいしいお菓子を食べてもらいたいと思ったのは……優しさからじゃありません」

ティンプラ「……? どういうことですか?」

ティンプラさんが首を傾げると同時に、色素の薄い髪がさらりと揺れる。

〇〇「ティンプラさんがいつも優しくしてくれるから、私もあなたに笑顔を届けたいと思ったんです。 私は……」

(……もしかしたら、この気持ちは言わない方がいいのかもしれない)

(でも……)

不安と緊張によって下を向いていた私は、意を決して顔を上げる。

そして……

〇〇「私は、優しいティンプラさんのことが……大好きだから。 だから、あなたに笑顔を届けたいと思ったんです」

ティンプラ「え……?」

ティンプラさんが、今まで見たことがないほど大きく目を見開く。

彼はしばらく無言のまま私をじっと見つめていたけれど、やがてその表情は、ふっと和らぎ……

ティンプラ「……不思議です。再び幸せな違和感を覚えました。 これまでよりも、ずっとずっと強い違和感を……」

ティンプラさんは目を細めながら、私の頬にそっと手を添える。

その瞬間、鼓動が大きく打ち鳴って……

賑わう街の喧騒は遠ざかり、そこに二人しかいないような感覚を覚えるのであった…-。

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