月最終話 二人の欲が重なる時

部屋の大きな窓からは煌めく満天の星が見える…-。

滞在先に戻った私達は、それぞれの部屋に戻っていた。

(あんなことを口にしちゃうなんて)

―――――

〇〇『これからもずっと……ヴァスティさんと一緒にいたいです』

ヴァスティ『お前に言われずとも、これからもずっと一緒だ』

―――――

想いを抑えることができず、ついヴァスティさんに伝えてしまった言葉を思い出す。

伝えた言葉に嘘も偽りもない、けれど……

(ちょっと大胆すぎたかな)

自然と頬が熱を帯びるのを感じていると、部屋の扉がノックされた。

ヴァスティ「俺だ。開けるぞ」

〇〇「は、はい」

ドアが開き、微笑みを口元に浮かべたヴァスティさんが入ってくる。

ヴァスティ「約束通り、迎えに来たぞ。 一緒にいたいと、お前がそう言ったからな」

〇〇「!」

鎮まりきっていない頬の熱が、彼の視線を受けてより増した気がした。

けれど今は、恥ずかしさよりも会えた嬉しさの方が勝っていた。

(……また触れられなくなるのは、嫌だから)

〇〇「はい……嬉しいです。ヴァスティさんと一緒にいられて」

ヴァスティ「……」

素直な気持ちを口に出すと、ヴァスティさんの綺麗な瞳が一瞬、宙を彷徨う。

〇〇「……ヴァスティさん?」

ヴァスティ「後は、なんだ」

〇〇「え……?」

ヴァスティ「お前の望むものはなんだと聞いている」

(私の望むもの……?)

突然の言葉に戸惑いつつも、思い浮かぶ答えは一つしかない。

〇〇「ヴァスティさんと……これからもずっと一緒にいることです」

ヴァスティ「それはもう、聞いた」

〇〇「でも、それ以外の望みなんて…-」

小さく息を吐いて、ヴァスティさんが唇の端を持ち上げる。

ヴァスティ「……まったく、お前は呆れるほど無欲な奴だ。 この俺の大切な女なんだ。望むなら、全てを与えることも厭わんというのに」

〇〇「……っ」

ヴァスティさんの手が肩に回されたかと思うと、そのまま軽々と抱き上げられる。

ベッドへとゆっくりと座らされると、軋むスプリングの音に、胸が小さく音を立てて…-。

ヴァスティ「……お前は純粋すぎる」

私の前に跪いた彼の手が、私の足へと丁寧に添えられる。
  
その手が優しく滑り下りていき、足の甲にそっと口づけを落とした。

〇〇「……っ!」

(ヴァスティさん……!?)

ヴァスティ「本当は俺にこうされて嬉しいくせに、そのことに気づかない」

私を諭すように細められる彼の視線に、鼓動がどんどん速くなっていく。

〇〇「そ、そんなこと…-」

動くことができないまま、ヴァスティさんを見つめ返すと…-。

ヴァスティ「なんだ?」

彼は悪戯っぽい笑みを口端ににじませ、足先まで唇を添わせた。

〇〇「んっ……」

(強引なのに……優しい)

次々に落とされる柔らかなキスが私を甘く痺れさせ、感覚を奪っていく。

ヴァスティ「不思議だ。お前はすでに俺のものであるというのに。まだお前を求めている。いつも……お前が欲しくてたまらなくなる」

激しく訴えるような彼の瞳に捉えられ、私は小さく息を呑む。

ヴァスティ「……お前はどうなんだ? 〇〇」

〇〇「私も……同じです」

彼の強欲さに触発されるように、心の奥にある欲が膨らんでいく。

〇〇「ヴァスティさんが、欲しい……」

ヴァスティ「……」

互いを見つめ合うと、眼差しに含んだ熱が混ざり合った。

火照る体は、今はただ彼だけを求めている。

ヴァスティ「今夜は特別だ。お前の言う通りにしよう。 さあ、姫君。望むままに……俺の全てを与えよう」

甘く耳朶をくすぐる声とは裏腹に、肌を滑る彼の手は私を翻弄するように動いて…-。

〇〇「んっ……!」

不意に唇を奪われると、そのままゆっくりと視界が反転する。

天井を背に微笑むヴァスティさんは、組み敷いた私を貪欲に求めた。

ヴァスティ「……〇〇。 これで……いいか?」

強く求められることで彼の存在を感じ、満たされていく。

私のすべてはもう、世界一強欲なヴァスティさんにすっかり支配されていた。

(ヴァスティさんは……すごいな)

ヴァスティ「笑っているな。その顔も、好きだ」

〇〇「ヴァスティさんも、笑ってます……」

ヴァスティ「ああ……」

この上なく満足そうに笑って、彼はまた私に深く口づける。

ヴァスティ「……愛している」

(私も、愛してる……)

降り注ぐ口づけを受け止めながら、小さく頷き返す。

ヴァスティ「お前のその顔が俺を煽る。 ……俺だけの姫」

静けさに満ちた部屋に、甘い囁きが溶けていく。

朧な月明かりが、一つに重なる私とヴァスティさんの影を長く伸ばしていた…-。

おわり。

<<月7話||月SS>>