月7話 罪すら包む強欲

吹き抜ける風が、私の声に振り返ったヴァスティさんの前髪を揺らす…-。

〇〇「あ、あの……」

(思わず呼び止めてしまったけれど……)

気持ちを伝える言葉が見つからない。

唇を噛む私を見て、彼の眉根がわずかに寄せられる。

ヴァスティ「どうした。お前は、まさかこのままでいいと思っているのか?」

〇〇「……え?」

ヴァスティさんの声に混じる寂しげな響きを聞いて、胸に小さな痛みが走った。

(そういえば、あの時……)

―――――

〇〇『ヴァスティさん、やめてください……!』

―――――

彼に告げてしまった言葉を思い出し、私は慌てて首を横に振る。

〇〇「違います。あれは本心じゃなくて…-」

私が言葉を口にすると、ブレスレットが再び淡い光を放ち始めた。

(また……何か起こるの?)

(これ以上、ヴァスティさんと離れてしまったら……)

思わず口をつぐむ私に、ヴァスティさんはまっすぐに視線を向けてくる。

ヴァスティ「構わん。続きを聞かせろ」

〇〇「でも…-」

ヴァスティ「お前の全てが俺のものであるように。 俺の全てはお前のものだ。何が起きようとも必ず傍に行く」

(ヴァスティさん……)

ためらいのない言葉に背中を押され、私は強く彼を見つめ返した。

〇〇「……わかりました」

彼に触れられなくなる直前に口にした言葉……

(もしそれがヴァスティさんにとって拒むように聞こえてしまったのなら……)

〇〇「あの時の言葉は……恥ずかしくて口にしてしまったんです」

紡ぐ言葉に反応するようにブレスレットの光が煌めきを増し、彼と私を照らし出す。

〇〇「このブレスレットには驚きましたけど……今日は一緒にいられて本当に楽しかったです」

(もし、このままずっと触れ合えなかったとしても…-)

〇〇「これからもずっと……ヴァスティさんと一緒にいたいです」

ヴァスティ「〇〇……」

ブレスレットの光が、輝きを強くしていく…-。

光の中、冷たい金属音が耳に響いて…-。

その瞬間、私とヴァスティさんを隔てていたものが散ったのがわかった。

カランという音を立てて、ブレスレットが足元に落ちる。

(もしかして……)

〇〇「ヴァスティさ…-」

ヴァスティさんを見ようとして顔を上げた瞬間、唇に温かいものが触れた。

〇〇「……!」

唇を重ねたまま、彼の手が私の頬に添えられる。

ヴァスティ「お前に言われずとも、これからもずっと一緒だ」

そっと離れた彼の吐息が、甘く鼻先をかすめた。

〇〇「……はい」

頷く私にふっと笑みを浮かべると、ヴァスティさんがブレスレットに目を落とす。

ヴァスティ「このブレスレットは……お前の言葉に反応していたのかもしれない」

〇〇「私の言葉に……」

ブレスレットは力を失ったかのように、ただ陽光を反射している。

(それなら、こんなことになったのは……)

〇〇「ごめんなさい。私が素直になれなかったから……」

ヴァスティ「……」

不意に腕を引かれ、彼の胸の中に抱き込まれる。

頬に触れた彼の胸からは、少し速い鼓動が伝わってきた。

ヴァスティ「謝罪などいらない。 お前の罪もまた、俺のものなのだから」

喜びを瞳の中ににじませて、ヴァスティさんが私を見つめる。

彼の後ろに広がる空は、目が醒めるような青く澄んだ色をしていた…-。

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