月7話 私が作る色

強い風が吹き抜け、街を彩る染色した布を弄ぶ…-。

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ウィル『今日君と何をしようか考えたんだけど、一つ提案があるんだ』

ウィル「君も色を作ってみないかい?」

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(私が色を? どういうことだろう)

不思議に思いウィルさんを見つめていると、彼が静かに口を開く。

ウィル「今回撮ろうと思っている作品、君の意見のおかげで今までとは違う雰囲気に仕上がりそうだよ。 それで、ふと思ったんだ。 僕の色への感想じゃなくて、君が生み出す色ってのを見てみたいって。 君が思う、君自身の色を……」

(私の色……)

ウィルさんの瞳が、カメラを覗いていた時のようにわずかに鋭さが帯びる。

ウィル「もちろん僕も作るから、お互い完成したら見せ合おう。 楽しそうじゃない?」

(ウィルさんと見せ合う……)

その光景を思い浮かべて、私は気分が高揚していくのを感じた。

〇〇「楽しそうです!」

ウィル「だろう? じゃあ、作ることに決定だね?」

〇〇「はい!」

ウィル「そうと決まれば、行くよ」

ウィルさんは私の肩に手を置くと、通りの方へと誘った。

……

工房で職人さんから一通り作り方を教わり、さっそく色作りを始める。

けれど、いざたくさんの材料を前にすると、どんな色を作っていいのか迷ってしまう。

(私が作る色か……)

参考にしようと、街を彩る色を思い出してみるけれど、どの色も綺麗でさらに迷いが深くなる。

(ウィルさんはどんな色を作るつもりなんだろう?)

(もう決まったのかな?)

気になって、ふと横に並ぶウィルさんへと視線を向ける。

彼は迷いもなく鉱石などを選んでいるように見えた。

ウィル「どんな色を作ろうか悩んでいるの?」

〇〇「はい……」

ウィル「自分の色って言っても、なかなか一色には絞れないよね。 どんな色も自分のようで自分じゃないような……」

〇〇「そうなんです」

私の気持ちを言い当てられた気がして、思わず頷くと、ウィルさんが面白そうに声を上げて笑い出した。

ウィル「じゃあ、僕を想う君の気持ちを色にして見せてよ」

〇〇「ウィルさんへの想い?」

思いがけない言葉に、頬が一気に熱くなっていく。

〇〇「君が抱くその感情も、君のものだろう? 知りたいな、君が思い描く色を。 君には僕がどう映っているのか」

ウィルさんの手が伸び、私の頬に触れた。

熱くなっているのを知られそうで、私は思わずウィルさんから視線を逸らしてしまう。

〇〇「わかりました……作ってみます」

材料の方へ向き直ると、一度胸に手をあてて目をつむった。

(ウィルさんへの想い……)

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ウィル『君の怯えた顔はやっぱりいいねぇ』

ウィル『君の怯える顔を見ると、胸が高鳴って……しょうがないよ』

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(怯えた顔や悲鳴が好きで、捉えどころがなかったり)

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ウィル『何か考えごと?』

ウィル『君の怖がっている表情は好きだけど、元気がないのは嫌だな』

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(元気がない私を気にかけてくれたり)

(そして……)

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ウィル『〇〇! スクリーンに映すから、色を見てもらえる?』

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(映画監督としての真摯な姿……)

ウィルさんのいろんな面を知る度に、もっと知りたい、彼と並んで歩きたいと思った。

(私の、ウィルさんへの想いはきっと……)

ウィルさんの方へ視線を向けると、彼と視線が合い、私の頬がじんわりと熱くなった…-。

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