そして迎えた、クライヴァーの親善試合当日…―。
チームメイト1「はぁっ……!」
チームメイト2「たぁっ!」
熱気に包まれる会場の中、試合は一進一退の攻防戦が続いていく。
両者の力は均衡していたけれど、じりじりと味方の体力が削られているのがわかった。
(このままじゃ……)
そう不安を感じた時…―。
カノエ「お前ら、どうしたんだ! あれほどの舞を踊れる、こよみの国の男が……これぐらいで根を上げたりはしないよな!?」
チームメイト達「おおっ!」
魂を震わせるような激に皆の士気が高まり、チームメイト達が持ち直していく。
その時、試合前に話し合った作戦が頭をよぎった。
―――――
カノエ『俺の異能力を使うタイミングが重要だな……』
〇〇『最後の詰めに使うなら、私とカノエさんの前線チームが王まであと二コマまで迫った時……ですね』
カノエ『そうだな……』
〇〇『それまでは防戦一方になることもあるかと思いますが……』
カノエ『……大丈夫だ。皆を信じよう』
―――――
作戦は、私とカノエさんを始めとした数名のメンバーが、後方で味方の王を守るチームメイトを信じて突き進み……
最後にカノエさんの異能力を発動して畳みかけるというものだ。
(それを仕掛けるのは、今……!)
カノエ「大丈夫そうだな。○○……いくぞ!」
〇〇「はい!」
前線で皆を引っ張っていたカノエさんと私がさらに前に出る。
カノエさんは背中で皆を鼓舞するように、一切ひるむことなく敵の武器を破壊しながら進んでいった。
カノエ「はあっ!」
(強い……)
惚れ惚れするような雄姿に思わず見入ってしまいそうになった、その時…―。
(あっ!?)
〇〇「カノエさん、危ない!」
カノエさんの目の前に、異能力で空間移動してきた敵が立ち塞がる。
カノエ「……!」
(次のターンで攻撃されたら、カノエさんが危ない!)
(でも、このまま進めば私達の勝ち……!)
そう思った私は自分の異能力を発動させた。
〇〇「……っ!!」
瞬時に回り込んでカノエさんを狙っていた敵の不意をつき、一撃で倒す。
意表をつかれた敵の武器にひびが入り……やがて壊れた。
(やった!)
上手くできて喜んでいたところに、カノエさんが声をかけてくれる。
カノエ「助かった。なかなかやるな」
〇〇「役に立ててよかったです……!楽しいですね!」
気持ちが高揚して、私はつい試合中なのにカノエさんにそう言ってしまう。
すると……
カノエ「ああ、楽しい。お前の言葉を聞かなかったら、こんなに楽しめなかった」
〇〇「カノエさん……」
ふっと、カノエさんが目を細め……
カノエ「それだけ戦えるなら安心だ。背中はお前に預けたぞ」
(え……)
かけられた言葉をすぐには信じられず、私は瞳を瞬かせる。
けれどすぐに嬉しさが込み上げ、笑顔で彼に返事をした。
〇〇「はい!任せてください。カノエさんの背中は私が守ります!」
カノエ「お前は……本当に強い女だな」
〇〇「カノエさんの隣に立っていたいですから」
カノエ「……お前には敵わないな」
ふと、それまでの好戦的な表情に甘い雰囲気が漂い……
カノエ「……早くこの試合に勝利してお前を抱きしめたい。 上手く言えないが……きっと最高の気分だろう」
〇〇「……!」
とくんと、胸が大きく音を立てる。
カノエ「いくぞ!」
〇〇「はい!」
私達は背中を預け合いながら敵陣を突き進んでいく。
…
……
戦況は優勢のまま続き、最後にはカノエさんが異能力を発動して敵の王の前に陣取る女王を倒し、その勢いのまま王を取って、試合終了となった。
観客「うおおおおっ!!」
勝利を告げる審判の声に、会場が揺れるほどの歓声が上がる。
それと同時に仮想空間が消え、そこかしこから私達のチームを賞賛する声が聞こえた。
カノエ「やったな」
〇〇「皆で掴んだ勝利ですね」
カノエ「ああ。それと……」
ゆっくりと彼の手が私に伸び、強く抱き寄せられる。
〇〇「っ……」
カノエさんの胸に顔を寄せると、まだ速い彼の鼓動が伝わってくる。
カノエ「勝利の女神がいたからだな」
〇〇「あ、あの…―」
身じろぐけれど、仮想空間を出た私が、カノエさんの腕の力にかなうはずもなく……
私はただ、彼に抱きしめられていた。
そんな私達を、チームメイト達がにこにこと笑いながら見守っていたのだった…―。
おわり。