クライヴァーの試合当日、一進一退の接戦が続く中、俺の前に突如、異能力で空間移動してきた敵が立ち塞がる。
(やられた!このままだと、次のターンで攻撃された場合に……)
追い込まれたかと思われた、その時だった。
〇〇「……っ!!」
○○が異能力を発動させ、瞬時に俺の前へ回り込んだかと思えば、敵の不意を突き、一撃で倒す。
(○○……)
(本当に、やってくれる)
カノエ「助かった。なかなかやるな」
〇〇「役に立ててよかったです……!楽しいですね!」
振り返り、頬を紅潮させた彼女の姿が目に入ると、ぐっと感情が熱く湧き上がった。
(お前といると本当に、いろいろなことに気づかされる)
(いつも新鮮で……そして、幸せだ)
カノエ「ああ、楽しい。お前の言葉を聞かなかったら、こんなに楽しめなかった」
〇〇「カノエさん……」
カノエ「それだけ戦えるなら安心だ。背中はお前に預けたぞ」
一瞬、驚いたように目を丸くしたが、○○はまた満面の笑みになった。
〇〇「はい!任せてください。カノエさんの背中は私が守ります!」
カノエ「お前は……本当に強い女だな」
〇〇「カノエさんの隣に立っていたいですから」
込み上げる愛しさを押し込めることなどできず、その想いがじんわりと表情へ溢れ出てしまう。
カノエ「……お前には敵わないな。 ……早くこの試合に勝利してお前を抱きしめたい。 上手く言えないが……きっと最高の気分だろう」
〇〇「……!」
(ここまでの高揚感を、かつて感じたことはあっただろうか)
湧き上がるものを、どんな言葉で表現すればよいのかすらわからない。
カノエ「いくぞ!」
〇〇「はい!」
○○と二人、背中を預け合いながら敵の王のもとまで切り込む。
その後、俺達のチームは無事に勝利を手に入れた…―。
…
……
勝利を収めたその日の夜のこと、俺の腕の中で彼女は恥ずかしそうに身をよじった。
〇〇「あ、あの……カノエさん、ずっとこのままですか?」
カノエ「さっき言っただろ?早く試合に勝利してお前を抱きしめたいって」
〇〇「でも、試合がおわってすぐに……抱きしめてましたよ?」
その言葉通り、試合後にもしっかり彼女を抱きしめたが、部屋に戻ってからもこうして、離すことができずにいる。
(勇敢に戦うお前を見て……共に楽しもうとするお前を見て、改めて感じたんだ)
(お前が、好きだと……)
カノエ「……お前と同じチームになれて、本当によかった」
しゃべると首筋に息がかかるのか、○○はまた少し身をよじった。
その仕草がなぜだかまた、胸に込み上げるものがある。
〇〇「私もです。カノエさんと一緒だったから、すごく楽しめました。 勝てて本当によかったです」
カノエ「ああ。俺達には勝利の女神……お前がついていたからな」
〇〇「そんな……んっ」
俺の吐息から逃れようとする姿が、どうしても気にかかって……
ふっと、その白い首筋に顔を埋めた。
〇〇「く、くすぐったいですよ……!」
カノエ「ああ、わかってる」
〇〇「……っ」
軽く吸いたてると、彼女の体がびくりと震えた。
じん、と胸の奥が熱く疼き、もっと欲する衝動に駆られる。
カノエ「○○……」
今一度、ゆっくりと首筋へ唇を這わせてから静かに顔を上げる。
視線がぶつかると……熱く潤んだ瞳が戸惑うように俺の視線から逃げた。
カノエ「待て」
頬に手をあて、視線を戻してほしいと態度で懇願ずると……
本当に困った顔をして、○○の瞳が俺を見る。
カノエ「○○、好きだ」
〇〇「あ……」
ようやく言えた言葉と同時に、その柔らかな唇を奪う。
ぐっと胸元を掴んだ彼女の指先すら愛おしく……
(もう今夜は、止められないかもしれない)
深くなる口づけに、必死についてこようとするそのいじらしさに駆り立てられて、胸の中に生まれた愛は、止めどなく溢れ出てしまうのだった…―。
おわり。