月最終話 キミに酔う聖夜

暗い空から灯りの街へと、雪が静かに降り積もる…-。

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ダルファー『早く二人きりになりたい。キミを独り占めしたい』

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(どこへ行くんだろう?)

絡められた指にドキドキしながら、横顔を見つめていると……

ダルファー「もしかして警戒されてる?」

含んだ笑みをダルファーから向けられて、頬が熱くなる。

〇〇「そんなことは……」

ダルファー「じゃあ、僕の部屋でお酒を飲みながら食事でもしよう。 クリスマスのことを、もっとたくさん教えてもらわないと……ね?」

〇〇「はい、わかりました」

ダルファーの誘いの言葉が嬉しくて、私は笑顔で頷いたのだった…-。

……

部屋の中は暖かく整えられていて、私達の外套や髪についた雪は、瞬く間に雫になる。

〇〇「ダルファー、髪が……」

ハンカチで拭こうとすると、その手を軽く押しとどめられてしまった。

ダルファー「キミが先だよ」

彼はソファから柔らかな布を取り上げると、ふわりと私を包み込む。

〇〇「ありがとうございます。でも、ダルファーも早く拭かないと……」

布を手にしたダルファーが、柔らかな眼差しで私を見つめた。

(……ダルファー?)

ダルファー「うん、僕もちゃんと拭くから」

目の前で、ダルファーが雫を拭いていく。

ダルファー「ほら、これで大丈夫。さあ、〇〇ちゃん座って。 とっておきのスパークリングワインがあるんだ」

ソファに腰かけると、ダルファーがグラスにお酒を注ぐ。

私達は金色の泡が揺れる華奢なグラスを持ち上げた。

ダルファー「乾杯、って言うので合ってる?」

〇〇「メリークリスマス、ですかね」

ダルファー「じゃあ、メリークリスマス」

グラスを合わせてワインを口をつけると、ほのかな花の香りが立ち上る。

〇〇「おいしい……」

ダルファー「ふふ……よかった」

グラスを持っていない手に、ダルファーがするりと指を絡めた。

その優しい感触に、たちまち私の鼓動は速くなっていく。

ダルファー「キミと一緒だと楽しくて、あっという間に一日が終わってしまうね」

〇〇「でもあまりクリスマスのことを教えられなかった気がします。もし明日でよければ…-」

私の言葉を遮って、ダルファーが首を横に振った。

ダルファー「もうだいたいわかったよ。ある神様の誕生日で、大切な人と過ごす日だよね?」

〇〇「確かにそうですけど……やっぱり、ちゃんと教えたいです。ダルファーの演奏会のためにも」

(きっと皆が楽しみにしてるはずだから……)

するとダルファーがおかしそうに口元を緩めた。

ダルファー「キミってやっぱり、ちょっと他の女の子と違うよね。 そんなに頑張らなくて大丈夫だよ。演奏会はやる気になったから」

〇〇「そうなんですか? でもどうして……」

くすりと笑みをこぼしたダルファーが、私の手を引き寄せて……

スチル

少しでも動けば互いの唇が触れ合いそうな距離に、私は息を呑む。

ダルファー「僕のためにこんなに一生懸命になるキミを見てたら、ちゃんとやろうかなって思ったんだ。 僕は自分のことですらあまり頑張れないから、キミのこと素直に尊敬する……いいなって思うよ」

まっすぐに向けられる愛おしげな眼差しに、胸が甘く締めつけられる。

ダルファー「それに、キミがそんなふうに僕のためにって考えてくれるのが、なんだか嬉しいんだ。 だから他の子みたいに僕から離れてほしくない。キミがいなくなったらって思うと……苦しくなる」

絡めた指を、ダルファーが自分の胸元へと引き寄せた。

〇〇「ダルファーがそんなふうに思ってくれてたなんて……」

思いがけず告げられた言葉が嬉しくて、頬が熱くなっていく。

ダルファー「僕も驚いてるよ。誰かを独占したいと思ったのなんて、初めてだ。 ……キミを僕だけのものにしたい」

熱い吐息が唇をかすめた次の瞬間、印を刻むようにキスが落ちる。

深くなっていく口づけに、心はすっかり溶かされていって……

ようやく離れた唇が、艶やかに弧を描く。

ダルファー「キミがもっと僕に酔ってくれたらいいのに……なんて、ね」

〇〇「これ以上……酔えないです」

恥ずかしさにきっと赤くなっている顔で見上げれば、ダルファーが困ったように笑った。

ダルファー「嫌だな……僕の方が酔わされそうだ」

柔らかな吐息と共に、また唇が重なって……

恋をする喜びが、私の心に灯った光をさらに煌めき輝かせるのだった…-。

おわり。

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