セフィル「偶然ですね」
クッキーを手にウィーニーと市場を歩いていると、セフィルさんに声をかけられる。
○○「セフィルさん」
あわててクッキーを後ろにかくすと、セフィルさんの眉がかすかにひそめられた。
セフィル「視察で城下に来ていたのですが……宜しければ、ご案内しましょう」
(嬉しいけど、視察をお邪魔したらいけないよね)
○○「いえ……案内は、ウィーニーがしてくれていますから」
セフィル「……。 ずいぶん私の側近と仲が良くていらっしゃるようですが。 一体、どんなおつもりで……」
○○「セフィル、さん……?」
セフィルさんの口調に首をかしげると、セフィルさんがはっと口をつぐむ。
セフィル「……申し訳ありません。どうぞお忘れください。 公務を投げ出してしまい……王室の人間として、ふさわしくない行いでした」
(もしかして、傷つけてしまった……のかな?)
セフィル「あなたのこととなると、自分を律せない……」
○○「え……?」
セフィル「いえ、私は公務に戻りましょう。 ウィーニー……○○様を頼む」
セフィルさんはとても悲しそうで、私は思わずその袖をひきとめる。
○○「あの……実は、セフィルさんがお忙しそうだから、クッキーを差し入れたくて」
そっとクッキーを差し出すと、セフィルさんが驚いたように目を見開いた。
セフィル「これは……私の好きな……」
ウィーニー「そうですよ、セフィル様! 俺、案内しただけですけど、焼きもちですか?」
セフィル「……っ」
ウィーニーがからかうように言い、セフィルさんの頬がかすかに赤くなる。
セフィル「それは……私のことを好いてくださっていると、思ってよいのでしょうか」
○○「え……っ」
突然のことに驚いたけれど……
その真剣な眼差しに、私は思わず頷いてしまう。
すると、セフィルさんが突然に私を抱き上げて……
○○「あ……っ」
そうして空高く飛び立つと、ウィーニーは楽しそうに手を振った…―。