うららかな日差しが差し込む昼下がり…―。
○○「あの、セフィルさんの側近の方……ですよね?」
さっそく調査を開始した私は、セフィルさんといつも一緒にいる若い側近の方に声をかけた。
側近「はい、○○様」
○○「私、セフィルさんにお礼がしたくて……。 お好きなものとか、教えていただけませんか?」
側近「ああ……それでしたら、今朝、紅茶のクッキーが食べたいと言ってましたよ」
人懐っこい笑顔を浮かべ、側近さんが教えてくれる。
側近「城下町で売っているものなんですけど……以前僕が買って行ったら、セフィル様気に入っちゃって」
(それなら、用意できそう!)
側近「よかったら、お店にご案内いたしましょうか?」
○○「いいんですか?」
側近「もちろん。ちょうど城下が恋しくなってきたところですし」
○○「ありがとうございます……!」
(セフィルさん、喜ぶかな)
嬉しさに頬を緩めたとき、
セフィル「……随分楽しそうですね。何を話していらっしゃるのですか」
セフィルさんに声をかけられる。
(秘密にして、驚かせたい)
○○「いえ、何でもないんです」
あわてて言うと、セフィルさんが眉をかすかにひそめる。
側近「それよりセフィル様、さっき執事が探していましたよ」
セフィル「……そうか」
○○「あの、で、ではこれで」
気付かれないよう、私は逃げるようにその場を後にした。
…
……
(無事に買えてよかった)
側近さんの案内で、私はクッキーを手に入れることができた。
側近「売り切れてなくてよかったですね」
側近さんの言葉が遠ざかり、私の目は、ただ一つの人影を追っていた。
(セフィルさん……!)
側近「セフィル様……あ、そっか。そういえば今日は城下視察のご予定でした。 ああ、またあんなに人に囲まれて……」
(いつも、ああなんだ)
○○
「国民の方々に、愛されているんですね」
ーーーーー
セフィル「……愛されているのは、私の仮面です」
ーーーーー
(やっぱり、皆さんがセフィルさんの仮面を見てるなんて思えないよ)
人に囲まれた後ろ姿をじっと見つめていると、側近さんがクスリと笑みをを落とす。
側近「セフィル様が気になりますか?」
○○「わ、私……」
側近「いえ、自分の主人が○○様みたいにかわいい女性に好かれるなんて。 嬉しいなって」
(好かれる……)
その言葉に胸が不意に音を立てる。
それを隠すように、私はあわてて口を開いた。
○○「お陰様で、クッキー買えました。ありがとうございます……えっと、側近さん」
側近「やだな、ウィーニーって呼んでください」
○○「じゃあ、ウィーニー。本当にありがとうございました」
私はウィーニーに微笑みかけた。
…
セフィル「……」
執事「おや、あれは……○○様と……ウィーニーですな。 何やら楽しそうなご様子…―」
セフィル「……すまないが。 今日の予定は、キャンセルするように」
執事「……セフィル様? セフィル様、どこに行かれるのですか」
二人を、セフィルが追いかけて行った…-。