城に降り立つと、セフィルさんは私を抱いたまま寝室へと入っていく。
○○「セフィルさん?あの……」
柔らかな月の光に照らされた部屋はとても気持ちがよくて、
けれどもその中で、私は心を落ち着けられずにいた。
○○「……っ」
私を降ろすと、セフィルさんはゆっくりと私を抱きしめる。
驚いて思わず離れようとすると、セフィルさんは私の手をつかみ……
○○「ん……っ」
強引に唇を奪う…―。
驚いて身を引こうとするも、力強い腕に抗うことはできなかった。
(なにが……起こったの?)
目を閉じる暇も与えられなかった突然のキス……。
とても驚いたけれど……
急に胸が、激しく高鳴り始めた。
(ドキドキしすぎて、苦しい……)
ゆっくりと、私の唇に舌が割り入れられる。
息継ぎさえも許されないその口付けはそれでも優しくて、
私の心が、彼で満たされていくことを感じた。
(私、セフィルさんが)
(好き……)
セフィル「先ほど、私を好いていると言ってくださいましたね。 ……ご覧の通り。 あなたの前では、私は仮面をつけていられない。 そんな私でも……好いてくださいますか」
彼の熱を帯びた視線に捉えられ、私は頷くことしかできない。
すると、セフィルさんはかすかに笑って…―。
セフィル「では……お言葉に甘え」
そうささやいて、私の唇をもう一度塞いだ。
セフィル「どうやら素顔の私は、あなたの唇が他の男の名前を呼ぶことを許せない……」
○○「……っ」
(ウィーニーのこと……?)
瞬く私の瞳をそっと手で覆い隠す。
セフィル「素顔の私は、貴方の瞳が私以外の男を見つめることを許せない」
視界を奪われた私は、背中がやわらかな布に触れたことを感じた。
セフィル「素顔の私は…―」
目隠しをしたままに、セフィルさんは私の太ももに触れ、素肌をあらわにしようとする。
○○「セ、セフィルさん……っ!」
手でその指をおしとどめると、
セフィル「……自分でもわからないのです。 自分が自分でなくなっていくようで……。 あなたがウィーニーと楽しそうにしている姿が、私は耐えられなかった。 公務を放り出して、走り出してしまうほどに……。 素顔の私は、皆が慕う王子とはかけ離れているようです。 こんな風になるのは、あなたの前でだけだ……」
(素顔のセフィルさんに会えるのは、私だけ……?)
セフィル「○○……」
セフィルさんの指が、私の靴下を下ろしていく。
甘い言葉の余韻にひたっているうちに、私は素肌をあらわにされていった。
(恥ずかしい……っ)
脱がされていくブラウスから目をそらすと、耳をセフィルさんに甘く噛まれた。
○○「やっ……」
かすかに甘さを含んだ私の声に、セフィルさんが優しく微笑んだ。
セフィル「嫌、ですか? こんな私を、好いてくださると。 先ほどはそう仰ってくださいましたが」
○○「そ、そうですけど……!」
セフィル「良いのですよ。 いくら嫌と仰っても……。 もう、聞こえませんから」
○○「セフィルさ……」
その先の声はセフィルさんの唇に奪われて、
セフィルさんの指先が胸元を撫で降りていくことを感じる。
(本当に……さっきまでのセフィルさんと違う)
私を見つめる瞳は変わらず優しくて……
けれど私の肌を撫でる指は、私に抵抗を許さない。
(まるで、優しい悪魔みたい……)
頬に、首筋に、セフィルさんの口づけが落とされていく。
○○「……っ」
セフィル「○○……。 愛しています……」
そして、より深くへと触れていく彼の指の動きを感じながら……
私は、声にならない甘い吐息を、響かせていった…―。
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