月SS 君を想う

城から見る城は、朝日に輝いて見える。

その城のひときわ陽に光る窓…-

庭のテラスに座って、カーテンに閉ざされたその窓を、俺はボーっと眺めている。

(あいつ……まだ寝てるかな……)

(まだ具合悪いのかな……)

(こんなに天気がいいのに、あいつは外に出られないのか)

昨日の夜、〇〇は熱を出してしまった。

(俺が、あいつを散々振り回したせいだよな……)

そんな事が頭の中でぐるぐる回っている。

その時、横から笑い声が聞こえた。

庭師「そんなに気になるのでしたら、お部屋に行ってみたらどうですか?」

驚いて声の方を見ると、庭師がクスクスと笑いながら枝を手入れしている。

ルーフェン「なっ何の事だ?」

庭師「ずっとそこから見ておいででしょう。 あの窓は、〇〇様のお部屋でしょうか」

誤魔化しても無駄だと言うように、庭師が城を見上げる。

その視線は、俺が見ていた部屋に向けられていた。

(見られていたのか!?)

ルーフェン「べっ別にあいつの部屋なんて見てない! ただちょっとあいつが元気になったかなーとか、今日は起きれんのかなとか。 俺が振り回して具合悪くさせたから、気まずいっていうかだな……!」

慌ててまくしたてて、ハッと気づいた。

(俺……全部話してる!?)

(また俺は……)

(こういう所が単純だって、兄貴に笑われるんだ!)

ルーフェン「とっとにかく俺はここで城を見るのがすきなんだよ!」

自分の単純さに腹が立って、つい文句ったらしい口調になってしまった。

そんな俺を見て、庭師がまた目尻を下げた。

庭師「さようでございますか」

笑いをかみ殺そうとしているが、難しいらしい。

(俺が単純だから、城の奴ら皆、いつも俺を面白がるんだよな……)

恨みがましく見ても、笑いのツボに入ったのか庭師はついに笑い声を漏らした。

(まあ……笑顔になれるんならいいか……)

(きっとこういう所が単純だって言われるんだろうな)

ふと、庭師のそばで咲くピンクの花が目に留まる。

ルーフェン「……その花は何て言う花だ?」

庭師「これは、アルメリアでございますよ」

ルーフェン「可愛い花だな」

フワフワと揺れる花を見て、〇〇の嬉しそうな顔が頭に浮かんだ。

(きっとあいつが見たら喜ぶんだろうな……)

ルーフェン「……あいつにも見せてやりたいな」

つい口に出て、俺は慌てて口を手で塞ぐ。

(また笑われるか?)

チラッと横目で庭師を見る。

やはり庭師は笑っていたけれど、仕方ない。

それに…-

庭師「でしたら、切って差し上げましょうか。きっと花を贈られたら喜びますよ」

思わぬ言葉に俺の小さな悩みはどうでもよくなってしまったから。

ルーフェン「本当か!?」

庭師「ええ」

庭師が、花の茎に手を伸ばす。

でも俺はそれを慌てて止めた。

ルーフェン「やっやっぱりいい!」

庭師が不思議そうに首を傾げる。

俺は、光の中で輝く花々を見渡した。

ルーフェン「せっかくこんなに綺麗に咲いてんだ。切ったら可哀想だろ? あいつが元気になったら、一緒にここに見に来ればいいんだ」

(そう、あいつが元気になれば……)

(なら俺は、こんなところでグダグダしてる場合じゃない)

(気まずいなら、ちゃんと言えばいいんだ!)

立ち上がると、俺は城に向かって歩き出した。

〇〇の部屋まで来て、ドアに手を伸ばす。

けれど、ノックをしようとして、出来ずに手をおろした。

(あいつ、起きてんのかな?)

(まだ寝てんのかな?)

(具合よくなったか?)

(俺が来たら、また気を遣うんじゃ……)

勇気を出してここに来たのに、いざドアの前に立つとまた頭でぐるぐる考えて動けない。

(……こんなに誰かの事を気にするのは初めてだ)

一度、部屋から離れて歩き回った。

(要は誘わなきゃいいんだ!)

(一言声かけるだけならあいつだって……)

ルーフェン「よし、ちょっとだけ具合聞いて、悪かったらすぐに部屋から出ればいいだけだ!」

俺は再びドアの前に立つ。

けれど…- 

ルーフェン「ダメだ~!」

またノック出来ずに、ドアから離れた。

ドアはあいつと俺を隔てて、そこに静かに立ちふさがっている。

その大きさに、俺はまた部屋の前を歩き出した。

おわり。

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