月SS ひみつの相談

夕暮れの中、ボクと〇〇ちゃんの影が横並びになる。

お父様から洞窟にある『王家の証』を持ってくるように、言われていたけれど…-。

(お花……摘んできたほうがよかったかな?)

(でも、摘んだらかわいそうだし……)

ボクは何度も、洞窟のほうを振り返る。

あの時はあれでいいと思ったけれど、少しだけ後悔しはじめてもいた。

(大事な試練だったのに……)

隣を歩く〇〇ちゃんを見上げる。

(〇〇ちゃん、ボクのことかっこわるいって思ったよね……)

(……お父様にも怒られちゃうんだろうなぁ)

(嫌だなぁ……)

なんだか泣きそうになって、ボクはぎゅっと手を握りしめた。

(泣いちゃだめだ……!)

手のひらに爪が食い込んで、少しだけ痛い。

でも、そのおかげでボクは何とか涙を飲み込むことができたんだ。

お父様は怖いけど、ボクは正直に自分の気持ちを話すことにした。

国王「ロルフ、王家の証はどうした?」

(やっぱりお父様……怖い……)

その時…-。

(〇〇ちゃん……)

〇〇ちゃんが、繋いだボクの手をぎゅっと握りしめてくれた。

(ボク、頑張らないと……!)

勇気を振り絞って、お父様の目をじっと見つめる。

ロルフ「おっ、…お花を見つけたけど……持って帰りませんでした」

怖くて足が、ガクガクしてくる。

ボクは、それを抑えるために両足に思いきり力を込めた。

お父様の口がゆったりと動くと、その口角が上がる。

国王「そうか……」

お父様の表情はとても柔らかくて、あたたかいものだった。

(あれっ……?)

女王「ロルフ、それでいいのですよ。花を労わる優しさはとても素晴らしいわ」

ロルフ「ありがとう……ございます……」

〇〇ちゃんを見ると、優しく微笑んでくれた。

(全部、〇〇ちゃんのおかげだ)

こみ上げる思いを、ボクは今すぐにでも伝えたくなる。

……

(ボクがお礼を言いたかったのに……)

〇〇「ロルフ君、頑張ったね!」

ロルフ「そうでしょうか……」

(お礼を言う前に、〇〇ちゃんがボクを褒めてくれた……)

(ボクもちゃんと言わないと……!)

そう決心したのに…-。

〇〇「国王様も笑ってたよ」

〇〇ちゃんに、優しい眼差しを向けられると、とっても嬉しくて……

なんだか、涙が込みあげてきてしまう。

(どうしてこんなに優しいの?)

ロルフ「〇〇ちゃん……」

ボクは思わず、〇〇ちゃんに抱きついてしまった。

ロルフ「〇〇ちゃんがいてくれたから……」

〇〇「私はなにも……」

ロルフ「そんなことない…です……。 〇〇ちゃんが、ずっと……励ましてくれたから……」

(洞窟も怖かったけど、〇〇ちゃんが一緒にいてくれたから頑張れた)

(ひとりだったら、絶対にできなかった……)

(これからもずっとずっと、ボクのそばにいてほしいな)

甘ずっぱいような感情が、ボクに押し寄せてくる。

(この気持ちって……)

ロルフ「あの……」

(えっと……たしか)

ロルフ「好きな人には…こうするんですよね……?」

〇〇「え……?」

ボクはちょっと背伸びをして、〇〇ちゃんのほっぺたにキスをする。

〇〇「っ……!」

ボクのほっぺたも、ジワリと熱くなってくる。

(恥ずかしい……けど、ちゃんと言わなきゃ……)

ロルフ「お礼と……ボクの気持ちです……」

(ちゃんと、言えた)

ほっとしたら、もう一度涙が溢れてきたけれど……

ボクは、それを拭うことはしなかった…-。

おわり。

<<月最終話