月8話 君の中毒性

それから数日…-。

ロイエさんへ抱いた淡い恋心を胸に秘め、私は部屋へ閉じこもっていた。

(ロイエさんと一緒にいたい……けれど、これ以上好きになってしまったら)

―――――

トルゲ『ロイエ様はこの国で、とても重要な責務につかれております。 しかしながら、姫様が来られてからロイエ様は気もそぞろ……。 どうかこれ以上、責務の妨げにならないよう気をつけてくださいますよう……』

―――――

(邪魔をしたくない……)

そんなことばかりを考えて、部屋から出られずにいると…-。

ロイエ「おい、〇〇、いるんだろう?」

〇〇「……!」

やや性急に繰り返されるノックの音と共に、ロイエさんの声が部屋に届いた。

(……どうしよう)

予期しない来訪者に驚きつつも、身支度を整え扉を開ける。

ロイエ「返事をしてから扉を開けるまでに、1分2秒もかかっていた」

〇〇「……すみません」

ロイエ「おや、まだ寝ていたのか?」

〇〇「いえ、そういうわけでは……」

眉をひそめたロイエさんに、言い訳をするように慌てて返事をする。

ロイエ「では部屋に一人で何をしていたんだい。この部屋には面白いものは特にないだろう?」

〇〇「それは……」

ロイエ「今日目を覚ましたのは何時だい?」

〇〇「え……? えっと、七時くらいかと」

ロイエ「では七時に起床し、何をしていた。女性は朝の準備に時間がかかると言うが、具体的には何を?」

〇〇「それは……秘密です」

ロイエ「秘密……ふむ」

ロイエさんは難しい顔をして手を顎に当てた後……ふっと表情を緩めた。

理知的な瞳が細められ、また胸が苦しくなる。

ロイエ「久しぶりに君の声を聞いたような気がする。 いや、正確には2日足らず……40時間と15分3秒ぶりなのだが、感覚としては久しぶりだ。 普通、他人と2日程度会わなくとも久しぶりという感覚には陥らないものだが。 君の声は中毒性が高いのかもしれない。それとその……」

〇〇「……?」

軽く人差し指を立てて指を差され、不思議に思っていると……

ロイエ「笑みだ。君の笑みは、見ていると非常に好ましく、より中毒性が高く感じられる」

〇〇「……ありがとうございます?」

(これって、褒めてくれてるのかな?)

ロイエ「では行こう。今日は空いているかい?」

〇〇「え……」

そう問われた瞬間に、トルゲさんの言葉を思い出して返事をためらってしまう。

すると…-。

ロイエ「いや、君の機微や都合にかまっている余裕はないな。行こう」

〇〇「っ……!」

言い終わるが先か、ロイエさんが私に腕を伸ばす。

〇〇「ロ、ロイエさ…-!!」

ふわりと体が宙に浮き、気付けば私はロイエさんに抱き上げられていた…-。

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