月最終話 パレードの終わり

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アヴィ『行くぞ』

〇〇『行くって……どこに?』

アヴィ『決まってるだろ』

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アヴィに手を引かれ、私達はパレード会場へと走り続けた。

けれど…-。

会場にたどり着いた時には一足遅く、パレードはすでに終わりを迎えていた。

(……終わっちゃった)

アヴィ「……ごめん」

目に見えて申し訳なさそうに肩を落とすアヴィに、私は慌てて首を横に振った。

〇〇「ううん。今日一日、すごく楽しかった」

アヴィ「〇〇……」

見物していた人々が、満足そうに微笑みながら会場を去っていく。

(少しだけ残念だけど……)

皆の笑顔を眺めながら、私は深呼吸する。

(これからまた、旅が始まるんだ……)

〇〇「……行こう? 皆、そろそろ集合場所へ来る頃だよ」

アヴィに笑いかけ、私はその場に背を向け歩き出す。

けれどその時…-。

スチル

〇〇「……っ!」

アヴィが後ろから私を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。

アヴィ「……そんな顔するな」

肩越しに囁かれた言葉が、耳をくすぐる。

アヴィ「駄目だってわかってるのに……触れたくて、たまらなくなる」

〇〇「え……?」

アヴィがどんな表情をしているのか知りたくて、けれど、肩越しに振り向こうとしても、それを拒むようにきつく抱きしめられて……

アヴィ「見るな。今、たぶん俺……変な顔してる……」

〇〇「アヴィ……」

私を抱きしめる彼の腕の力が強くなる。

アヴィ「約束したから……。 旅が終わるまでは、ちゃんとお前をトロイメアの姫として守ってやんねえとって思ってる。 けど、お前が辛そうな時とか、泣いてる時とか、かわいく笑った時とか……。 抱きしめたくて、たまらなくなるんだよ」

(アヴィ……)

肌に触れる吐息の熱さに、私の体が甘く震えた。

アヴィ「独占したいって……お前の一番傍にいるのは、俺なんだって。 ……叫びたくなる時だってあるんだ」

〇〇「っ……!」

私を掻き抱く力強い腕に、そっと手を添えた。

〇〇「……抱きしめていてほしい」

(離さないでほしい。今は…-)

アヴィ「……」

一度強く抱きしめると、アヴィはゆっくりと私の体を離した。

緩んだ腕の中で、アヴィの方を振り返る。

アヴィ「〇〇……」

アヴィのことをもっとよく知りたくて、頬に手を添えると…-。

お返しのように、アヴィが私の頬に触れた。

アヴィ「俺は……世界を救って、国を守る。旅立つ時に立てたあの誓いを、必ず果たしてみせる」

私の大好きな青紫色の瞳に、強く凛々しい輝きが宿っている…-。

〇〇「うん……」

節くれだった無骨な手が愛しくて……

アヴィの手の上にそっと手を添えて、私は何度も頷く。

アヴィ「けど……。 この旅が終わったら、俺はお前を国に連れ帰る」

〇〇「え……?」

私に注がれる眼差しに、熱っぽさが混じる。

アヴィ「もう我慢なんてしねえ。騎士として、男として……俺だけがずっと、お前の傍にいる」

(アヴィが私の傍に……)

その風景が、私のまぶたの奥に鮮やかに浮かび上がる。

〇〇「……見に行きたい」

アヴィ「え?」

〇〇「アルストリアの綺麗な星空を……アヴィとフラフと、一緒に」

アヴィ「〇〇……」

アヴィが私の体を引き寄せる。

視線が重なったかと思うと、アヴィが私の唇を塞いだ。

〇〇「っ……!」

情熱的なキスに、胸が焦がれるように熱くなっていく。

深く確かめるように、何度も重なり合い……

(今はこのまま……)

私は想いのまま、アヴィに身を預けた。

その時、空に明るい光が昇っていき、大きな大輪の花を咲かせた。

〇〇「花火……まだ、あったんだね」

アヴィ「……ああ。綺麗だな」

色鮮やかな花火を見上げて、私達は笑い合う。

さっきまで感じていた熱情が、優しく温かなものへと変わっていく…-。

アヴィ「ったく……変なところで邪魔されたな」

〇〇「え?」

アヴィ「いや?」

アヴィがそっと微笑み、私の手を取る。

優しく労わるようなキスが頬に落とされて……

花火が私達の時間を見守るように、夜空を鮮やかに彩っていた…-。

おわり。

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