月7話 一人残されて

太陽と月の光がその色を変え始め、空は幻想的な雰囲気をまとい始めた。

(今頃……パレードが行われてるんだろうな)

賑やかな音楽や歓声が、遠くの方からわずかに聞こえてくる。

けれど私はここから動きになれず、ベンチに座ったまま手元の写真を見つめていた。

〇〇「……」

写真に写るアヴィの表情に、口元が緩むけれど、その笑みは、泡のようにすぐに消えてしまう。

―――――

アヴィ『……もう充分、息抜きできたよ。ありがとうな』

アヴィ『お前は見たいなら行ってこいよ。俺は次の準備をしてるからさ』

―――――

(……わかってる)

アヴィは真面目で、私のことやこれからのことを考えてくれている…-。

(けれど……)

頭では納得できても、私の胸は寂しさでいっぱいだった。

―――――

アヴィ『いいって。お前、俺に気使ってあんま行きたいところ行けてないだろ?』

―――――

(そうじゃない……私は、アヴィと一緒にいられるだけで楽しかったのに)

いろんな思いが込み上げて、視界が揺れる。

慌てて写真から顔を上げ、通りを眺めた。

その時…-。

(あれは……)

パレードの方へと向かう人々の流れに逆らい、誰かがこちらへ走ってくるのが見えた。

見覚えのある赤い髪が、ここからでもはっきりとわかるほど鮮やかで…―。

アヴィ「……」

〇〇「……アヴィ? どうしたの?」

慌てて目をこすり、私はアヴィに笑顔を向ける。

けれどアヴィは、強がりに気づいたのか、優しく私の頬に手を触れた。

アヴィ「……なんで、そんな顔してんだよ」

〇〇「アヴィ……」

アヴィ「俺は、お前のそんな顔が見たいわけじゃねえんだよ」

切なげに瞳を細め、アヴィは私の目尻を指でなぞる。

その仕草に、抑えていた気持ちが込み上げてきて、私は……

〇〇「なら…-。 なら、一緒にいて。もう少しだけでいいから……」

アヴィ「……っ」

アヴィが、驚いたように瞳を見開いた。

〇〇「駄目かな……?」

アヴィ「……」

彼の青紫色の瞳が、戸惑いを含んでいつかのように揺れる。

アヴィ「……『自分を偽るな』か……言ってくれるぜ」

囁くようなつぶやきは、私の耳に届かずに消えた。

〇〇「え……?」

聞き返す私に答えることなく、アヴィは私の両手を優しく握った。

そのまま自分の方へと引き寄せ、私を立たせてくれる。

アヴィ「行くぞ」

〇〇「行くって……どこに?」

アヴィ「決まってるだろ」

アヴィが、申し訳なさそうに笑う。

パレードの最後を彩るような大きな花火が、星空に華々しく打ち上がった…-。

<<月6話||月最終話>>