少しお酒が入ったせいか、頬がやけに熱い…-。
ダグラス「まずいな。このままじゃ今夜は帰してあげられなくなりそうだ。それでも、いいの?」
〇〇「それは……」
(なんて答えれば……)
心臓が、胸の内側で怖いくらいに大きく跳ねる。
しばらく言葉のないまま見つめ合っていると、ダグラスさんは困ったように眉をしかめて笑った。
ダグラス「ごめん。順番が逆だった。 俺は君が好きだよ……だから今夜、〇〇と一緒に過ごしたい」
〇〇「……!」
(ダグラスさんが……私を!?)
真剣な言葉の囁きに、今度こそ返事を忘れてしまう。
うるさいくらいに心臓が鳴って、頬はただ熱くて……
ダグラス「あははっ! まるで熟したリンゴみたいだ。真っ赤だよ」
〇〇「え!? だって、ダグラスさんが……」
混乱と羞恥に慌てる私に対して、そっと彼が身を乗り出すようにして囁きかける。
ダグラス「そうだった。君をそんなにしたのは俺だった。 ねえ、返事を聞かせてくれないかな? 〇〇」
〇〇「私は…-」
言葉がのど元で詰まって出てこない。
(嬉しいけど、こんなの恥ずかし過ぎて……)
手をこまねいてテーブルに置いてあったグラスの柄に指をかける。
ダグラスさんは私の顔を覗き込みながら、楽しそうに目を細めた。
ダグラス「……答えられないかな? けどそんな瞳で見られたら、色よい返事がもらえたって俺は思うけれど、いい?」
〇〇「……あっ」
その瞬間、彼は私の手を取って、指先に敬うようなキスをした。
触れた感覚に、きゅっと胸が苦しくなる。
(ダグラスさんには、きっと私の気持ちなんて見透かされてる……)
〇〇「……はい」
なんとかそう返事をすることが、今の私には精いっぱいだった…-。
…
……
その後、ダグラスさんにエスコートされながら、私はホテルに戻った。
―――――
ダグラス『まずいな。このままじゃ今夜は帰してあげられなくなりそうだ。どれでも、いいの?』
―――――
彼の言葉を思い出し、途端にまた鼓動を速くしてしまっていると…-。
ダグラス「さ、おいで。こっちにスイートルーム直行のエレベーターがあるんだ」
〇〇「は、はいっ」
彼の声が頭に響いて、思わずピンと背筋を伸ばしてしまった。
ダグラス「どうしたの? また緊張してるのかい? 俺の存在は君のとって怖いものなのかな?」
少し寂しそうに笑ってダグラスさんが肩をすくめる。
〇〇「そんなことは……」
ダグラス「じゃあ大丈夫、怖がらないで?」
〇〇「……!」
彼の腕に抱かれて耳元に囁かれたかと思えば、額に感じたのは、微かに熱い彼の唇の体温だった…-。