月9話 一つだけ

交わす言葉も少ないまま、彼のラボを去った夜…ー。

その翌日から、まるで彼は再び人が戻ったように研究に集中し始めた。

けれど……

〇〇「ルルス! 大丈夫なんですか!?」

私は彼がラボで倒れたと聞いて、慌てて彼の寝室へと見舞いに来ていた。

医者「お静かに。ただの過労です。数日横になればすぐによくなりますよ」

〇〇「すみません……」

彼の枕元に控えていたお医者様に言われて、恥じ入るように小さくなる。

医者「ほっほっほ……いやしかし、ルルス様にこんなかわいらしい恋人がいらっしゃったとは。 長年ルルス様に仕えておりますが……嬉しいことです」

〇〇「!」

ルルス「人が弱ってる時に……そういうこと言わないでくれよ」

医者「ルルス様も、変わられましたなあ」

お医者様はにこやかに笑った後、鞄に診療道具をしまうと、やがて寝室から去って行った。

残されたのはベッドに横たわるルルスと、先ほどのお医者様の言葉で頬を赤くした私の二人きり。

ルルス「情けないな……どうやらムキになって無理をしていたらしいよ」

〇〇「ルルス……」

彼は目をすがめて笑った後、体を起こして私に視線を投げかける。

その手が先日と同じように、私の指先を握ったけれど、加えられた力は弱々しくて……

〇〇「まずは体をしっかり直してください。研究はそれからでもできます。 私、エリクシールが完成するまでずっとルルスの傍にいますから」

自然とそんな言葉が出て、彼の指先を握り返す。

すると…ー。

ルルス「……お前、言ってくれたよな。 オレが作るなら、皆を幸せにできるって」

〇〇「……はい」

柔らかな言葉が彼の口からもたらされる。

ルルス「一つ約束をしてもらってもいいだろうか?」

〇〇「なんですか?」

ルルス「……こういうのは慣れてなくて、なんて伝えていいものか……。 その、元気になったら〇〇と行きたいところがある」

〇〇「……行きたいところ?」

ルルス「いや、平たく言うとオレはなんでもない日をお前と二人で過ごしたい」

〇〇「それって……」

濁された言葉に問いかけると、ルルスは少し恥ずかしそうに微笑んだのだった…ー。

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