その日、空はこれまでになく青く晴れ渡っていた…ー。
すっかり体調を取り戻したルルスに誘われて連れてこられたのは、アルケミアの街の郊外にある、大きな噴水がある公園だった。
〇〇「街の近くにこんなところがあったなんて知らなかったです」
ルルス「前に街に来た時は案内してもらわなかったのか?」
〇〇「はい。街を回るだけで一日が終わってしまって…」
彼は噴水の方を指差すと、その指先を公園に併設された建物の方へ移した。
ルルス「ここは錬金術の力を利用して作られた浄水場なんだ。 この噴水も、公園の少し向こうに流れる小川も、そこにある浄水場で浄化された水が利用されてる。 浄水施設は国の計画で作ったけど、その横に公園を作ったのはオレのアイディアだ」
〇〇「そうだったんですか?」
ルルス「ああ。 せっかく水が綺麗になったから、噴水を作って綺麗になったぞ! って見せたいなって思ってさ。 研究が目的だなんて言っておいて……思い返してみればオレは随分、見せたがりだったらしい」
そう言って、ルルスがいたずらっぽく笑う。
(この浄水場もルルスの研究の成果なんだ)
わたしは広い公園の敷地を見渡す。
昼下がりの長閑な公園では、人々が思い思いに穏やかな時を過ごしていた。
〇〇「すごいですね、ルルスって……」
ルルス「褒め言葉か。誰に何を言われてもピンとこなかったけど、〇〇にそう言われると嬉しい」
彼はそう言って、横にいるわたしの手を優しく包んだ。
公園に植えられた木々の合間を渡る小鳥達の歌声が聞こえる。
自然と彼に寄り添えば、彼は私を静かに抱き寄せて……
(温かい……)
心の中で、ルルスの存在がますます大きくなっていく。
彼の胸に頭を預けると、自分と同じリズムで刻む心音が心地よかった。
…
……
穏やかな時間を二人きりで過ごす内に、空は茜色から藍色へと美しいグラデーションを描き始めた。
(もうこんな時間なんだ……まだこの人の隣にいたいけど)
そんなことを思った時だった。
ルルス「〇〇」
〇〇「え?」
夕陽の照らす公園で、ルルスが私を抱きしめた。
ルルス「今日、オレはここでお前に伝えないといけない言葉がある。 ラボや見舞いに来てくれた時の……〇〇の言葉を聞いて、気づいたんだ」
彼は真剣な瞳で、私の前に膝をつくと…ー。
【スチル】
ルルス「オレは……〇〇のことが好きだ。 誰かにこんなふうに気持ちを伝えたいと思ったのは初めてだ」
〇〇「っ、ルルス……?」
ルルス「オレは絶対に研究を続けて、エリクシールを完成させる……。 お前は、エリクシールが完成するまでずっと傍にいると言ってくれたな? その言葉に、甘えてもいいか……?」
〇〇「……本当に私でいいんですか?」
ルルス「……これはジョークじゃないよ。そもそもオレはジョークを言えるほど面白い人間でもない。 ただ自分を魅せてくれた錬金術に人生を捧げている、くだらない男だ。 けれど、お前のためならそれ以外のことにも広く目を向けようと思う」
〇〇「ルルス……嬉しい……」
夢に一直線に向けられていた輝かしい瞳が、今は私だけを見つめている。
ルルス「オレも約束しよう。エリクシールが完成したら、その力はお前のために使いたい。 あの噴水のように、お前や皆の日々の幸せに、そっと寄り添えるように……。 だから、オレとこの国の未来を一緒に見てくれるか?」
〇〇「はい……ルルス」
彼は優しく私の手を取ると、唇を甲に押しつけた。
その柔らかな熱は、私の心に幸せをもたらし……
(ルルスがいればこの国も、きっと……)
アルケミアで暮らすすべての人々の幸せな未来を予感させたのだった…ー。
おわり。