月SS 生まれてくる愛

オレの心を映したような、抜けるように晴れ渡った青い空の下には…―。

寝室で数日横になっていた間に、何度も夢に見た光景が広がっていた。

(○○と並んで歩くだけで、どうしてこんなにも心が凪ぐのか……)

ふと隣を見れば、太陽のように光に淡く縁どられた○○の横顔があり、それだけで胸が豊かに、満たされるような感覚を覚える。

(まったく……不思議な反応だ)

そんな時、彼女の目がふとある場所に留まったのを見て、オレもそちらに視線を向けた。

(ああ……)

ルルス「ここは錬金術の力を利用して作られた浄水場なんだ。 この噴水も、公園の少し向こうに流れる小川も、そこにある浄水場で浄化された水が利用されてる」

話していると、自然と当時の研究風景が思い出される。

○○「すごいですね、ルルスって……」

つぶやくように言われて……オレは自分の胸が一瞬高鳴るのを感じた。

(○○といると、嬉しいとか楽しいとか普段感じにくいことを、頻繁に感じるから不思議だ……でも、こういう気分は嫌じゃない。 むしろ……)

もっと○○に近づいて、もっといろんな感情を知りたい。

そう思うと、オレの手は自然と彼女の手を包み込んでいた。

(オレと違って小さい……それに、温かいな)

ラボではほとんど耳にすることのない、小鳥達のさえずりや緑が風に揺れる音が辺りに優しく響いている。

その柔らかな空気に溶け入るように、○○はオレに身を寄せて…―。

(もう少し……このままで)

静かに胸に抱き寄せた彼女の体温が心地よくて、オレはしばらくそっと目を閉じていた。

……

次第に空の青が退色し、幾重にも重なった色の層を作り出し始めた。

その複雑な空の模様は、いずれ夜が来ることを伝えているようで……なんとも言えない焦燥感に襲われる。

(もうそろそろ、○○を帰さないといけない。 しかし、今……)

腕の中を見下ろすと、彼女の長いまつ毛がゆっくりと瞬かれるのが目に入る。

その瞬間、○○への想いが全身に溢れ出して……

(ああ……やっぱりそうだ。 今、伝えないといけないんだ)

オレはほとんど衝動的に○○を強く抱きしめていた。

ルルス「今日、オレはここでお前に伝えないといけない言葉がある」

ラボで過ごした時間や、父上達に結婚の話をされた時のこと……

そして、オレが倒れたことを聞きつけて、急いで見舞いに来てくれた時のこと……

○○と言葉を交わす度に、オレの中で不思議な気持ちが生まれてきた。

それはどんな錬金術でも精製できない、熱くて甘い感慨だった。

(この想いは……)

ルルス「オレは……○○のことが好きだ。 誰かにこんなふうに気持ちを伝えたいと思ったのは初めてだ」

○○「っ、ルルス……?」

ルルス「オレは絶対に研究を続けて、エリクシールを完成させる……お前は、エリクシールが完成するまでずっと傍にいると言ってくれたな。 その言葉に、甘えてもいいか……?」

口を開いた途端、胸の内に生まれくる言葉が止め処なくこぼれ落ち……

○○の白い肌をじんわりと赤く染め上げる。

(研究以外のことで自分の考えをこんな風に口にできるなんて、思っていなかったな)

○○「……本当に私でいいんですか?」

ルルス「……これはジョークじゃないよ。そもそもオレはジョークを言えるほど面白い人間でもない。 ただ自分を魅せてくれた錬金術に人生を捧げている、くだらない男だ。 けれど、お前のためならそれ以外のことにも広く目を向けようと思う」

口火を切れば、オレの中に在ったためらいは途端に消え失せ、

ただ彼女に伝えたい想いだけがはっきりと形を残していた。

○○「ルルス……嬉しい……」

見つめ合う瞳の奥に灯る炎が、甘く揺れる…―。

(……この美しい灯りはきっと、オレが守ってみせる)

ルルス「オレも約束しよう。エリクシールが完成したら、その力はお前のために使いたい。 あの噴水のように、お前や皆の日々の幸せに、そっと寄り添えるように……。 だから、オレとこの国の未来を一緒に見てくれるか?」

微かな緊張を覚えつつ、静かに尋ねると……○○はふっと表情を柔らかくした。

○○「はい……ルルス」

その返事を聞いた途端、自分自身も知らないようなひどく温かな感情が指先まで瞬時に巡った。

(愛とは……奥深いな)

満たされた気持ちで彼女の唇に柔らかく口づけを落とす。

その甘く優しい感触の中に、オレは彼女と共に作る未来の存在を確かに見つけていたのだった…―。

おわり。

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