月最終話 大好きの気持ちを込めて

街から大急ぎで城に戻ると、私はリドの部屋の前で息を整えた。

(お店が閉まる前に、間に合ってよかった)

手の中にあるリボンで飾られた袋を見下ろし、私はそれをそっと撫でた。

(リド……どんな顔するかな?)

期待と少しの不安が入り混じりながらも、笑みがこぼれる。

〇〇「リド……?」

ノックをしたから声を掛けると…-。

リド「〇〇か?」

声が返ってきて、私はゆっくりとドアを開けた…-。

部屋へ入ると、リドはベッドに腰をかけたまま私に視線を向ける。

リド「用事は済んだのか? けっこう長い時間だったけど……大丈夫だったか?」

私を気遣ってくれる眼差しに、少しだけ心が痛んだ。

〇〇「うん。待たせちゃって、ごめんね」

リドの傍まで行き、私も彼の隣に腰を下ろす。

〇〇「あのね、リド…-」

後ろ手に隠していた袋を、そっとリドの前に差し出した。

リド「え……?」

リドの綺麗な目が、驚いたように見開かれる。

リド「これ……オレに?」

〇〇「うん。開けてみて」

少し緊張しながら、私は彼の顔を見つめる。

(喜んでくれるかな……)

リドは袋にかけられているリボンを解くと……中を見るなり、瞳を輝かせた。

リド「これ……!」

袋の中にはさまざまな宝石の形をしたチョコレートが、顔を覗かせていた。

〇〇「今日、いろいろなところに連れて行ってくれたでしょう? エクランシュを食べたり、記念写真を一緒に撮ってくれたり……」

私は今日一日のことをひとつひとつ思い浮かべながら、言葉を紡いでいく。

〇〇「すごく嬉しかったから……私もリドにちゃんとお返しがしたいなと思って」

リド「……」

リドは私の瞳をまっすぐに見つめながら、話を聞いている。

〇〇「ありがとう……リド。 リドのことが、大好きだよ」

リド「……!」

リドは一瞬目を見開くと、頬を赤く染める。

そして何も言葉を告げないまま、私の肩に頭を乗せた。

〇〇「っ!」

リド「すげー驚いた……」

突然感じた重みと体温に、私の心拍数は一気に跳ね上がった。

(リド……?)

リドの顔をそっと覗くと、耳まで赤くなっている。

〇〇「……」

何を言ったらいいのかわからなくて、しばらくの間沈黙が続く。

(何か言わないと……)

焦って顔を上げようとした、その時…-。

リド「あーあ、あんたには敵わねえな」

〇〇「え……?」

わざと大きな声で言ったかと思えば、その後に続く言葉は小さくなる。

リド「……大好きとか、反則だろ。 かわいすぎて理性が飛びそうになるから、あんまオレを喜ばせるなよ」

触れ合う体から声が直に伝わり、心臓が大きく跳ねる。

リド「これからはできるだけ、あんたのわがままを叶えてやりたいって思ったのにさ……。 オレの方が、嬉しいことしてもらってばっかだ」

〇〇「……リドが嬉しいことが、私にとっても嬉しいことだよ」

リド「! だから、そんな喜ばせるなって」

リドがどんな顔で言っているのか、確かめようとするけれど……

頬が真っ赤に染まっているのが少し見えるだけで、彼は一向に顔を上げてくれない。

〇〇「あの、リド……?」

リド「……それとも、理性が飛んでもいいってことか?」

〇〇「!」

頬を赤く染めたまま、リドが顔を上げて私へと手を伸ばす。

恥ずかしさで頬が火照り、私は思わずうつむいて自分のスカートを握りしめた。

〇〇「あ、あの……」

心臓が早鐘を打ち、息をするのさえ苦しい。

私の様子に気づいたのか、リドが私の瞳を覗き込み、優しく目を細める。

リド「冗談だよ」

いつものように明るく言うと、優しく私の頭を撫でた。

大きな手と体温を感じていると、リドが囁くように私に語りかけた。

リド「〇〇のしたいことをするのが、幸せだって思ってたけど……。 あんたがオレのためにいろいろ考えてやってくれるのも、すげー嬉しい」

(それは……リドのことがすきだからだよ)

そんな想いを込めて顔を上げると、同じように照れた顔をしているリドと、視線が絡み合った。

リド「ありがとな」

〇〇「ううん、私こそ…-」

そこまで言いかけると、その続きはリドの唇に飲み込まれる。

〇〇「……っ!」

突然のことで驚いたけれど、すぐに瞳を閉じてリドの優しいキスを受け止めた。

やがて唇が離れ、ゆっくりと目を開けると……

リド「〇〇。 大好きだぜ」

そこにはこの上なく幸せそうに微笑む、リドの姿があったのだった…-。

おわり。

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