ぼんやりと燈る灯は時折、妖しささえ感じさせる。
そんな中、突然生えてしまった尻尾に熱い視線を感じた僕は…―。
フォーマ「そんなに気になる?」
○○「えっ?」
薄明りでもわかるほど、彼女の頬が赤く染まっていく。
(かわいいな、君は)
(さすがにあんなふうに見られたら、誰だって気づくよ)
○○「うん。実はずっと、触ってみたくて……」
フォーマ「そんなにか」
僕は尻尾で、優しく彼女の手を撫でる。
フォーマ「ほら……どうぞ」
(好きなだけ触るといい)
(僕も……君に触られるのは嫌いじゃない)
(むしろ、嬉しい)
触らせてあげたい気持ちと、触ってほしい気持ち……
それらを抱きながら、彼女の目の前で尻尾を揺らす。
すると○○は、ゆっくりと僕の尻尾に手を伸ばした。
○○「わぁ……」
僕の尻尾を撫でる彼女が、嬉しそうな笑みを浮かべる。
だがこちらは、触られる度にくすぐったさを感じて……
フォーマ「っ……思ったよりくすぐったいな」
(それに、なんだか……)
彼女の甘い香りやその手の感触が、なぜかいつも以上に僕の心を強く煽る。
それは純粋な愛とは違う、欲望をはらんだ感情で……
(……僕も君に触れたい)
(このままおとなしくしていろなんて、ちょっとした拷問だ……)
○○「ふふ、かわいいね」
○○は笑みを深め、僕の尻尾を触り続ける。
(かわいい?)
フォーマ「……」
(こっちの気も知らないで……)
こらえなければと押さえつけていた感情が溢れ、体を熱くしていく。
気づけば僕は、獲物を狙う獣のように彼女をじっと見つめていた。
○○「ごめんね。嫌だった?」
僕の視線の意味を勘違いしたのか、彼女が慌てたように尻尾から手を離す。
だが……
(逃がさない)
フォーマ「……いや、僕から見れば君の方がずっとかわいいなって」
(だから、このまま逃がしたくない)
欲望のままに○○の腰を強く引き寄せ、至近距離から見下ろす。
フォーマ「少し、油断しすぎじゃないかな」
○○「……!」
フォーマ「……僕だって、男なんだ」
(君に触れたくて……触れたら、もっとほしいと思う)
(そんな感情を抱く生き物なんだ)
○○「フォーマ……?」
僕を見上げる○○の瞳が、戸惑うように揺れる。
それすらも、僕の心を強く煽って……
(これは、嗜虐心……なんだろうか)
(かわいい、愛しいと思えば思うほど、めちゃくちゃにしてしまいたくなる)
フォーマ「知ってた? 狐は雑食だけど、肉食性がとても強いって」
○○の好きな尻尾で、ゆっくりと肌をなぞると……
○○「……っ」
今度は彼女が体を震わせ、その姿を見た僕は嬉しさを感じてしまう。
フォーマ「そんな獣をかわいいなんて言って油断してたら、食べられても文句は言えないんじゃないかな」
僕は彼女の首筋へ唇を寄せ、吸いつくように口づける。
○○「フォーマ……!?」
フォーマ「あの実を食べたせいかな……君に、触れたくて仕方がない。 なんだか君を食べてしまいたい気分だ」
(この熱に任せてこのまま君を思うままに……)
フォーマ「君を食べても……いい?」
そう尋ねると、○○が静かに頷く。
それが僕に残ったなけなしの理性を消し去り……
(君のすべてが欲しい)
奪うように口づけ、その甘さを味わう。
そして口づけの合間に、力が抜けた彼女の体を畳へと押しつけた。
(まるで獣だな)
(本当に君を食らいつくしてしまいそうだ……)
○○「フォーマ……」
熱に浮かされたようなその声に応えることなく、彼女の帯を解いていく。
(こんなに大胆になれたのは、あの実のおかげかもしれないけど……)
(ずっと心の奥で、君をこうしたいと思っていた)
○○の帯を解いた僕は、彼女をきつく抱きしめる。
すると、背中に腕が回され……
フォーマ「君を……愛してる」
熱い吐息と共にこぼれた想いは、雨が降りしきる伊呂具の夜に溶けていったのだった…―。
おわり。