月6話 遠い日の記憶

本に強い意志が宿っているかのように、大きな音を立てて次々とページがめくられていく。

イナミ「まだ何かするつもりだね……」

止めなければと思っているのに、体は指一つ動かせない。

やがて本はぴたりと動きを止めると、妖しい靄で私達を絡め取った…-。

……

ゆっくりと目を開くと、そこは薄暗い畳の部屋だった。

〇〇「ここは……」

イナミ「部屋の中……? あの本が、オレ達をどこかに飛ばしたのかな?」

私達が状況を把握しようとしていた、その時…-。

『見てはくれない……気づいてはくれない……』

〇〇「っ……!」

声がした方を振り向くと、こちらに背を向けて座る男性の姿が……

(あの人は、まさか……)

男は私達に気づくことなく、鬼気迫る様子で何かを記している。

文机に灯るわずかな光が、垣間見える男の薄暗い横顔を照らす。

『こうして文字に綴ったら……いつかは…-』

(悲しい声……)

イナミ「オレ達は、どうやらあの物の怪の過去に取り込まれたみたいだね」

物の怪の姿を見つめただ立ち尽くす私の手を、イナミくんが握ってくれる。

『足りない……何か……繋がれる証を…-』

イナミ「行き場のない想い……。 そうか、だからキミは…-」

イナミくんは私の首筋に目をやる。

そして彼が何かもの言いたげに男へと視線を戻したその時…-。

暗い男の背中は遠ざかり、私達は再び闇の中に取り込まれていった。

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