月7話 伝えられた想い

まぶたに薄い光を感じて、恐る恐る目を開くと…-。

私達は、元いた図書館へと戻っていた。

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『足りない……何か……繋がれる証を…-』

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(あの人……本が見せたかったものは……)

本は先ほどまでの勢いを消して、静かにその場に留まっている。

ゆっくりと本に近づき、イナミくんは開かれたままのページにそっと触れる。

イナミ「大切な人に自分の想いを伝えることができないなんて……辛いよね」

まるで自分が傷ついているかのように、イナミくんの顔は苦しげだった。

イナミ「あの痣は、物の怪が狙った獲物につける印みたいなものだって本に書いてあったけど。 キミは……ただ、想う人との繫がりが欲しかっただけなんだよね。 キミの気持ちは……オレもよくわかるよ」

(え……?)

イナミ「オレも……つい最近、自分の気持ちに気づいたんだ。 大切に想う人へ、気持ちを伝えたいって」

彼の切なげな様子に、胸が締めつけられる。

(イナミくんは皆に優しいから……私だけが特別なわけじゃないのに……)

優しく語りかけていたイナミくんは、本を胸に抱いた。

妖しい靄はいつの間にか姿を消し、穏やかな光が本を包んでいる。

イナミ「キミができなかったこと、オレがやって見せるから……見守っててよ。 ね、〇〇ちゃん?」

〇〇「イナミくん……?」

私の方を振り返って、イナミくんはゆっくりと歩み寄る。

本から放たれた光は収まることなく、彼を幻想的に包み込んでいた。

イナミ「……好きだよ」

〇〇「えっ……」

思ってもいなかった彼の言葉に、私は息を呑む。

イナミ「キミと再会するまで、自分でも驚くくらい寂しく感じてた。 気づいたら、キミに会いたいって、そんなことばっかり……」

イナミくんを包む光が、柔らかく輝く。

イナミ「キミの笑顔が……ずっと忘れられなかった」

イナミくんの言葉のひとつひとつが、私の体を温かく満たしていく。

イナミ「次に会ったら、すぐに言おうと思ってたのに……遅くなってごめん」

〇〇「私も……イナミくんが好き。 優しいイナミくんのことが、大好きだよ」

(自分のことよりいつも、人を大事にするところとか……)

(大切そうに触れてくれるところとか……)

次から次へと溢れそうになる気持ちは言葉にならなかったけれど……

想いを伝えてくれたイナミくんに応えたくて、私も彼の瞳を見つめ返す。

イナミ「〇〇ちゃん……」

彼の手が優しく頭の上に乗せられて、心地よい力で撫でられる。

イナミ「これからも、〇〇ちゃんのことは、ずっとオレが守るから」

頭に乗せられていたイナミくんの手が下ろされ、私の指先にその瞬間…-。

本が彼の手を離れて、まばゆい光を放つ。

〇〇「っ……!」

イナミ「……ようやく、わかってくれたみたいだね」

ひときわ大きな光を放った後、本は床にすとんと落ちた。

めくれていたページは静かに閉じられ、辺りに静寂が訪れた…-。

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