月7話 危険な挑戦への覚悟

ジェット「俺の気持ちはもう決まってる。俺のスタントとしての力を必要としている奴がいるなら、俺はスタントとしての道を極める」

ジェットさんの部屋を訪れて数日後…―。

ジェットさんが制作会社にダブルの代役を引き受けることを伝えた後、すぐに撮影が始まった。

ジェットさんは周囲の心配をよそに、素晴らしいダブルをこなし、撮影は順調に進んでいるようだった…―。

(このまま、撮影が無事に終わりますように)

そんなことを思っていたある日の夜、私はジェットさんに部屋へと呼び出された…―。

○○「撮影、順調みたいですね。怪我とかしてませんか?」

ジェット「おい、始まってすぐなのにそりゃないだろ!」

私の言葉に、ジェットさんが眉をひそめる。

ジェット「安心しろよ、安全面は十分打ち合わせしてる。けど……」

ジェットさんの表情が曇る。

ジェット「明日は……例の前任のスタントが大怪我をしたシーンの撮影だ」

○○「……!」

ジェットさんの瞳に影が落ちたのを見て、苦しくなった胸を押さえる。

ジェット「これまで数々のスタントをこなしてきたけど、明日は俺も経験のない危ない撮影になる」

○○「そ、そんな……」

(もし、万が一何かあったら……)

そう考えると、心配と不安で胸が押し潰されそうになる。

○○「あの……私も撮影に同行させてもらえませんか?」

ジェット「……!○○が?」

○○「はい」

(なんの役にも立たないかもしれないけれど……せめて、傍で見ていたい)

ジェット「……」

ジェットさんはしばらく悩んでいるようだったけれど……

ジェット「わかった、いいぜ!」

○○「……っ!」

ジェット「俺も、お前が見ててくれるなら頑張れそうだからな」

○○「はい……!」

ゆっくりと自分に言い聞かせるように言ったジェットさんに、私も深く頷いた。

……

こうして翌日、私はジェットさんの撮影現場へと足を運んだ。

(……緊張する)

現場は、いつも以上にピンと張りつめた空気だった。

今日の撮影は街中でのシーンなのか、市街地の中心にセットが組まれている。

(大がかりなセット……ここで今日、ジェットさんが……)

組み上げられた足場を見上げると、怖くなり足が震えてきた。

ジェット「○○、約束通り、見に来てくれたんだな」

○○「はい、どうか無事で……」

祈るような気持ちで、両手を胸の前で合わせると、ジェットさんは口の端を吊り上げて、自信に満ちた笑顔を浮かべた。

ジェット「ああ!!」

そして私が指を組んだ手を、大きな片手で上から包む。

ジェット「最高にアグレッシブなスタント、見せてやるから、応援頼むぜ」

○○「……はい」

かすかに震えてしまっている私とは違い、彼は堂々としている。

まるで彼は、この緊張感が、これから始まることが楽しみで仕方ないといった様子で……

スタッフ「撮影、そろそろ入ります!」

○○「……!」

スタッフの掛け声が響き、ジェットさんがその場を離れる。

彼に包まれた手の熱さだけが、やけに印象に残っていた…―。

<<月6話||月最終話>>


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする