すっかり暗くなった頃・・・-。
城に到着し、食堂へ向かうと、王妃様が私達の帰りを待ち構えていた。
イリア「申し訳ありません、母上。遅くなりました」
王妃「イリア、どちらへ行っていたの?」
イリア「街へ出ておりました」
王妃「そうですか・・・・・・」
王妃様の視線が私に向けられる。
一瞬だったけれど、そこに冷たい怒りが含まれているような気がした。
王妃「夕食の準備ができております。どうぞお座りください」
(・・・・・・怒らせてしまったかな)
王妃様の様子に胸がざわめくのを隠し、私は椅子に腰を下ろした。
王妃「・・・・・・それで、今日はどのようなことをしたのですか?」
イリア「街を歩いてとても多くのことを学びましたが・・・・・・。 特に驚いたのは、あのジェラートです」
イリアさんが、私に微笑みかける。
街での楽しい気持ちを思い出して私も口元をほころばせたけれど、王妃様の冷たい眼差しを感じ、その気持ちはすぐに萎んでしまった。
王妃「そう・・・・・・楽しそうで何よりですね。 けれど、イリアを連れ回すようなことは、二度としないでいただけませんか。 この子は、我が国の大切な宝なのです」
王妃様の冷たい言葉が私に向けられる。
(お待たせしてしまったし・・・・・・王妃様のお怒りも、当然だよね)
○○「申し訳あ・・・-」
頭を下げようとしたその時、イリアさんの手が私の肩に置かれた。
イリア「母上、なぜ○○様に言うのですか?」
王妃「それは・・・・・・ねえ・・・・・・」
戸惑い口ごもる王妃様に、イリアさんは首を傾げた。
イリア「連れ出したのは私です。責めるなら私に言ってください」
王妃「・・・・・・」
それでも王妃様は不満げに私をちらりと一瞥すると、
ため息を吐いてフォークとナイフを置いてしまった。
それきり、夕食の場が静まりかえる。
(・・・・・・きちんと、謝らないと)
○○「申し訳ありませんでした」
イリア「○○様・・・・・・!」
私が頭を下げると、王妃様は満足そうに微笑んだ。
王妃「もういいのですよ。以後、気をつけていただければ」
言葉とは裏腹に、王妃様は氷のような瞳を私に向けていた・・・・・・
・・・
・・・・・・
食事を終え、イリアさんが私を部屋まで送ってくださった。
イリア「○○様、今日はありがとうございました。 そして、本当に申し訳ありませんでした。貴方にご迷惑をかけてしまいました」
イリアさんはそう言って、肩を落とした。
○○「すみません。せっかくかばっていただいたのに」
イリア「私の軽率な行動のせいで・・・・・・」
○○「いえ! 私すごく楽しかったです。 案内してくださって、本当にありがとうございました」
にっこりと微笑むと、イリアさんも優しく笑ってくれた。
イリア「果たしてあれで案内と言えたのかどうか・・・・・・でもそう言っていただけて嬉しいです。 私も楽しかったです。貴方といると、本当に楽しい」
噛み締めるようなイリアさんの言葉に、さっきまでの張り詰めていた心が溶けていく。
イリア「明日こそ、あの丘へ行きましょう」
イリアさんの瞳が、美しい風景に思いを馳せていた時のようにキラキラと輝く。
○○「はい・・・・・・!」
青い瞳の魔法にかけられたかのように、私も笑顔になっていた・・・-。
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