月SS 丘の上の葛藤

外を眺めると、まばゆいくらいの朝陽が輝いていた。

(晴れてよかった)

本日、私は〇〇様と丘へ行く約束をしていた。

(丘から見る景色は、きっと素晴らしいことでしょう)

(きっと、〇〇様も喜んでくださる)

私は、ふと〇〇様の喜ぶ顔を想像する…―。

〇〇「素敵な景色ですね、イリアさん」

イリア「ええ、そうですね」

私の手は、〇〇様の肩をそっと抱いて…―。

イリア「……!」

そんなことを想像してしまい、一気に恥ずかしさが募る。

(私は、何を想像しているのだろうか……)

自分の頬が、熱を持っていることを感じる…―。

(〇〇様の肩を抱くとは……なんて不純な!)

その時、母上が私の方へ向かって歩いていらした。

王妃「イリア、どこに行くのですか?」

イリア「〇〇様と丘に行ってまいります」

王妃「〇〇様とですか……?」

母上が眉をひそめる。

その物言いも、どことなく棘があった。

(母上は、〇〇様のことを芳しく思われていないのだろうか……?)

イリア「やるべきことはすべて終えました。安心してください、母上」

王妃「しかし……」

イリア「あの方は、私が今まで知らなかったものを教えてくださって……。 まるで、世界が広がるようなのです! こんなにも、私の心が跳ねるのは初めてです! すべて〇〇様のおかげです」

王妃「……っ」

つい饒舌になってしまった私を、母上は目を丸くして見つめてくる。

(変なことを言っただろうか……?)

イリア「失礼いたします」

母上の表情が、少し気になったものの……

私は母上に一礼をして、〇〇様の元へと走った。

……

私と〇〇様は、丘の上にたどり着いた。

〇〇「すごい、綺麗な眺め……」

隣に立つ〇〇様は、嬉しそうに声をあげる。

目の前に広がる景色に、〇〇様が小さく息を吐いた。

(なんて素敵な表情なのでしょう)

景色よりも〇〇様ばかりを見てしまう。

思わず、ほっとため息が漏れた。

イリア「……」

〇〇様の髪が、風の中でたなびいた。

(柔らかな髪……触れたい)

イリア「……」

私の右手が、〇〇様の肩の上で行ったり来たりしながら行き場を探す。

イリア「……」

(ああ……っ! 私はいったい、どうすればいいのだろうか……!?)

胸の高鳴りは、最高潮になってしまう。

私が、〇〇様の肩に手を乗せようとした時…―。

〇〇「綺麗な眺めですね、イリアさん!」

突然、〇〇様の視線が私に注がれた。

イリア「えっ、あっ、はいっ……!」

思わずうろたえてしまい、声が上ずってしまった。

〇〇「……イリアさん?」

イリア「いえ、なんでもないです」

〇〇「そうですか?」

私がそう言うと、〇〇様の視線は、再び景色へと移った。

(私は……いったい、何をしているんだ)

情けない気持ちが押し寄せて、私は自分の右手を左手の拳で、思い切り痛めつけた。

イリア「……っ!」

自ら叩いたものの、その痛さに思わず声が漏れる。

〇〇「イリアさん?」

〇〇様が、心配そうな視線を私に注ぐ。

イリア「いえっ、なんでもないです……綺麗な景色ですね」

〇〇「ええ、とても綺麗な景色ですね」

景色に集中するように心がけるが…―。

(駄目だ……全然集中できない)

私はやはり、〇〇様ばかり気になってしまう。

(私としたことが……どうしたんだ)

〇〇様に気づかれないように、私はそっと頭を抱えるのだった…―。

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