月7話 黒の衣装と、微かな嫉妬

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○○「私は……それなら、黒猫の衣装がいいかなと思います」

ペルラ「黒猫? どうして?」

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私の回答に、ペルラさんは意外そうに首を傾げる。

ペルラ「黒もいいかも……か。初めて言われたような気がする」

○○「そうなんですか?」

ペルラ「うん。ぼくの国では黒って、あまりいいものとされないから」

そう語るペルラさんの声は、最後には小さなつぶやきとなった。

その瞬間、自分の発言にハッと後悔をする。

(黒……きっと、ブラックパールを想起させるから)

それは、関わった者達を死に追いやるという、恐ろしい真珠……

激しい憎しみや怒りの感情により、ペルラさんの瞳から生み出される恐ろしいものだった。

○○「ペルラさん。ごめんなさい、私また…―」

思わず顔をうつむかせてしまうと……

ペルラ「気にしないでいいよ」

猫のように丸められた彼の手が、そっと、私の頬を撫でる。

優しい感覚に、私の心が甘く疼いた。

ペルラ「怒ったり悲しんだりしてるわけじゃない。 むしろ……素敵だって言ってもらえて嬉しい、かな」

○○「ペルラさん……」

もう一度私の頬を撫で、彼は長いまつ毛を美しく伏せる。

ペルラ「じゃあ、方向性も決まったし…―。 彼のところへ行ってくるよ」

○○「彼?」

問い返す私に、ペルラさんは意味ありげに頷いたのだった…―。

……

そして…―。

○○「よかったですね、ペルラさん」

ペルラ「うん。まさか、ウィル王子の衣装班の人が用意してくれるとは思わなかった」

人通りの多い道を避けながら、私達は宿へと向かう。

(ウィルさんのところに行くって聞いた時は、少し驚いたけれど)

衣装の詳細を詰め、ウィルさんに仕上げを相談しに行ったところ……

ウィルさんはペルラさんの衣装をいたく気に入ってくれ、仕立てにスタッフを用意してくれた。

ペルラ「きみのおかげだよ。いい衣装ができそうで嬉しい。 あ……けど、さっきの悪戯はびっくりした」

ペルラさんの言葉に、ウィルさんが悪戯をして驚かせてきたことを思い出す。

○○「こんなことなら、お菓子を持って行けばよかったですね」

ペルラ「うーん……まあ、あの人、お菓子をあげても悪戯しそうだけど」

(人の怖がる顔が大好きだって、聞いてはいたけれど……)

突然現れた大きなかぼちゃや、特殊メイクが施されたお化け達……

ウィルさんの大がかりな悪戯に、私は何度も悲鳴を上げてしまった。

ペルラ「でも……。 なんだかんだで、きみすごく楽しそうだったよね」

○○「え!? そんなこと…―」

ペルラ「そんなこと、ある」

少し怒ったような彼の声に、私は首を傾げる。

(ペルラさん……? 急にどうしたのかな?)

不思議に思い問いかけようとすると、すぐにペルラさんは私に顔を向け……

ペルラ「まあ……いいか」

何かを振り払うように首を横に振って、ペルラさんは私に向き直った。

○○「あの…―」

ペルラ「今日のお礼に、お菓子を買ってあげるよ」

○○「っ……」

ペルラさんの綺麗な手が、私の手を包み込む。

ぎゅっと、力が強く込められて……

ペルラ「……子どもだな、ぼく」

繋いだ手の温かさと、誰にいうでもない彼のつぶやきが、私の胸をくすぐった…―。

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