月7話 一緒に鳴らす鐘

潮見の鐘は昇り始めた月に照らされ、小高い港に幻想的に浮かび上がっている。

船員さん達には先に宴を始めてもらい、私達は鐘のある塔へと向かった。

塔へ続く小路には、すでに大勢の人々が行列を作っていた。

〇〇「すごい人ですね……」

ダグラス「なんてったって、一年最後のイベントだからね」

その時、ダグラスさんに気づいたのか、前に並んでいた恋人同士と思しき男女が声をかけてきた。

男性「ダグラス様、よろしければ僕達の前にどうぞ」

ダグラスさんは目を見張り、笑って首を振った。

ダグラス「気にしなくていいよ」

男性「いえ、そんなわけには……」

女性「そうです。私達はまだ、何をお願いするか決まってないですし。ね?」

男性「うん」

仲の良い二人の様子に、ダグラスさんが優しく目を細める。

ダグラス「いいね。俺もそういうのでいいんだ。恋人と一緒なら、待ち時間も退屈じゃないだろ?」

そう言って、ダグラスさんが私の腰を抱く。

(恋人って……)

彼の言葉と抱き寄せる腕の温度が、私の胸を高鳴らせる。

ダグラス「ね、〇〇」

ダグラスさんの瞳は私をまっすぐ捉えていて……

〇〇「……はい」

私は照れながら、小さく頷く。

ダグラス「ということだから。お気遣いありがとう」

恋人たちはどこか嬉しそうに、二人の世界へと戻っていく。

ダグラス「じゃあ、二人で願い事を考えようか」

ダグラスさんは私の腰を抱いたまま、他愛もないおしゃべりを始める。

彼の言う通り、二人で過ごす待ち時間は、あっという間に過ぎていくのだった…-。

……

塔の上では、大きな鐘が私達を見下ろしている。

ダグラス「何をお願いするか、決めた?」

〇〇「はい。ダグラスさんは何をお願いするんですか?」

ダグラス「俺はアンキュラの平和と安全。 それから……」

ダグラスさんが唇を寄せ、私の耳元で囁く。

ダグラス「君との時間が、これからも続きますように」

その囁きに、私の耳はかぁっと熱くなった。

そっと視線を上げると、ダグラスさんはにっこりと微笑んだ。

ダグラス「さあ、一緒に鳴らそう」

〇〇「……はい」

ダグラスさんの大きな手が、私の手をしっかりと包み込む。

一緒に鳴らした鐘の音は、星屑の散らばる夜空へと吸い込まれていった…-。

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