月最終話 勝者のおねだり

縁包み発売当日…-。

売り場には新しくなった縁包みの評判を聞きつけた人が大勢集まり……

商人「ヒノト様……! 初日だというのにあっという間に売り切れてしまいました」

〇〇「皆さんが喜んでくれて、よかったですね」

ヒノト「うん。絵札で随分盛り上がってたし、これは来年も続けようかな」

予想以上の反響の中、縁包みは瞬く間に完売したのだった…-。

……

陽も沈み、とっぷりとした暗闇が立ち込める頃…-。

ヒノトさんの部屋に招かれ、販売会成功のお祝いをすることになった。

お酒を飲みながら縁包みや絵札の話をしていると……

ヒノト「……そうだ。ねえ〇〇、花札やらない? 皆で会議をしてた時、絵札と花札を見比べながら、君とこれで遊びたいなって思ってたんだ。 忙しいのも一旦落ち着いたし、息抜きがてらちょっと遊びたいなって思うんだけど……どう?」

その言葉に、年始早々働き通しだった姿を思い出し、私は素直に頷いた。

(ずっと、誰かのために動いてたもんね)

すると、私の了承を得たヒノトさんが悪戯な笑みを浮かべる。

ヒノト「ねえ、せっかくだから賭けをしようか」

〇〇「賭け、ですか?」

ヒノト「負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くっていうのはどう?」

〇〇「なんでも、ですか?」

ヒノト「うん。でも大丈夫だよ、俺も久しぶりだし、そんなに強くないから安心して?」

小首を傾げてそう言われると、断ることはできず……

〇〇「わ、わかりました……」

少し不安を感じつつも、こうして私はヒノトさんの持ちかける賭けに乗ることにしたのだった…-。

……

余裕の笑みを浮かべるヒノトさんを前に、背中に汗が伝うのを感じる。

(そんな……)

ヒノト「これで、俺の勝ちだね」

あっという間に勝負をつけられてしまい、深いため息がこぼれ落ちた。

〇〇「ヒノトさん、そんなに強くないって言ってたのに……ひどいです」

ヒノト「ごめんね、手加減しようと思ったけどできなかった。だって、賭けに勝ちたいし」

清々しいほど素直にそんなことを言われると憎めなくて、覚悟を決める。

〇〇「……わかりました。約束は約束ですから」

ヒノト「いいね。それじゃあ何をしてもらおうかな」

〇〇「お、お手柔らかにお願いします……」

ヒノト「ふふ……」

楽しげだったヒノトさんの唇が、妖艶に弧を描く。

そして、整った顔がすっと目の前に近づいて…-。

ヒノト「君がどのくらい俺のことを好きか、知りたいな」

〇〇「え……?」

ヒノト「……教えて? 〇〇」

至近距離でねだるように見つめられ、にわかに鼓動が速まる。

〇〇「えっと……」

その視線から逃れるように目を逸らすと……

そんな私を逃がさないとでもいうように、ヒノトさんの手が私の腰に回って……

気づけば彼の膝の上に乗せられ、彼に見上げられる。

いつもと違う角度で見る彼の表情にドキリと心臓が跳ねる。

ヒノト「いつでも一緒にいたくて、触れたくて仕方ない。こんなに夢中なのは、俺の方だけ?」

蕩けるような声の響きに、体中が痺れるような思いがする。

妖しく光る瞳に促され、私の口は自然と開いていて……

〇〇「いえ、私も……ヒノトさんのことが好き……です」

なんとかそう返すと、ヒノトさんはますます笑みを深くする。

ヒノト「うん、知ってる。でも……。 今年はもっと、君を夢中にさせたい。俺のこと、好きで好きでたまらないくらいに」

〇〇「ヒノトさん……」

惜しみなく重ねられる甘い言葉に、どうしようもないほど頬が熱くなっていく。

ヒノト「ねえ、〇〇。 俺が王子として頑張ろうって強く思えたのは、君のおかげでもあるんだよ」

艶よりも穏やかさを増した心地よい響きで彼が話し続ける。

ヒノト「君が見てるから格好つけたいし、頑張れた。ありがとう、〇〇」

(ヒノトさん……)

息がかかるほどの距離で愛おしげな眼差しに見つめられ、体中が熱くなっていく。

こんなにまっすぐに想いを伝えてくれる彼に、私も気持ちを返したくなって…-。

〇〇「ヒノトさんが思ってる以上に、私……ヒノトさんのことが好きです」

囁くように耳元で告げると、彼は首を傾げて顔を覗き込んだ。

ヒノト「そっか。じゃあ教えてくれる? 君が本当はどれだけ俺を想ってくれているか、一晩かけて…-」

伸びてきた手が私の頭に添えられて、抗うこともできぬまま、唇を重ねる。

深くなっていく口づけに溺れながら……

新年の夜が静かに過ぎていった…-。

おわり。

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