月7話 九曜のために

翌朝…-。

部屋を出ると、ヒノトさんだけでなく従者の方々も忙しそうにしていた。

(ヒノトさん……結局、どんなことをするんだろう?)

昨日、街で花札の話を聞いて何かおもいついたらしいヒノトさんは、急いで城に戻り、皆を集めて遅くまで会議をしていたようだった。

ヒノト「〇〇、おはよう」

〇〇「あ! おはようございます、ヒノトさん」

ヒノト「今ね、縁包みの新しい仕込みを、急遽準備しているんだ」

〇〇「どんなものを取り入れたんですか?」

私の言葉に、ヒノトさんが得意げな笑みを見せる。

ヒノト「絵合わせだよ」

そして傍らにいた従者の方から一つ縁包みを受け取り、中から一枚の絵札を取り出した。

ヒノト「この絵は、たくさんの縁包みに入っているどれかの札と合わせると、ひと揃えになるんだ」

椿の花が描かれた札をヒノトさんから受け取り、隅から隅まで満遍なく目を走らせる。

それは確かに一枚の絵をばらばらにした欠片のようなものだった。

ヒノト「例えば、二枚一組で完成するものもあるし、もっと多く集めないといけないものもある。 花札みたいに、この縁包みを通して九曜の皆が一族関係なく楽しめたらいいなって思ってね。 買い物ももちろんすごく楽しいけど……ただ買って終わりじゃないものにしたい」

(買って終わりじゃないもの……)

ヒノト「いろんな人と交流するきっかけになってくれればっていう願いを込めたんだ」

このところずっと忙しそうだったうえに昨日も遅くまで会議をしていたはずなのに、ヒノトさんの表情は疲れを見せるどころか輝いていて…-。

―――――

ヒノト『未の一族がより輝けるように……この一年、王子としてより公務に精を出していくつもり。 だから、君達もついてきてほしい』

―――――

昨日の彼の言葉を思い出し、なんだか胸が熱くなる。

〇〇「すごく素敵だと思います」

ヒノト「ありがとう。よかった、君がそう言ってくれて」

〇〇「あの……私にも手伝えることってありますか? ヒノトさんの力になりたいんです」

すると、ヒノトさんはふっと口元を緩めて…-。

ヒノト「それじゃあ、お言葉に甘えて……少しお願いしようかな」

〇〇「はい!」

彼に頼られたことが嬉しくて、私は笑顔で頷いた…-。

そうして、縁包みに絵札を入れる作業を手伝うことになって……

(喜んでもらえるといいな)

そう願いを込めながら、一枚一枚丁寧に封入していく。

ヒノト「……ありがとう、〇〇」

ヒノトさんの形の良い唇が頬に落とされ、途端に鼓動が速まり始める。

(……いけない、今は集中しないと)

触れられたところが熱を帯びるのを感じながら、私は必死に手を動かしたのだった…-。

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