ゲイリー「呪いに……負けてしまったようだ……」
ゲイリーさんは、放心しきったような顔でつぶやくと、ふらりと私に背を向けた。
〇〇「ゲイリーさんっ!」
ゲイリー「離せ!」
〇〇「っ!」
思わずしがみついた手を、ぱしりとはね除けられる。
ぎりっと怒りに燃えた瞳が私に向けられた。
けれども私がびくりと体を震わせると……
ゲイリー「俺は……何を……」
ゲイリーさんは、ふっと意識を取り戻したように顔を歪めた。
〇〇「ゲイリーさん、大丈夫ですか!?」
ゲイリー「……苦しい。体中に、憎しみが渦巻いている……」
〇〇「しっかりしてください! ゲイリーさん」
苦しげに顔を歪めたまま、ゲイリーさんは頭を抱え込み、ひざをつく。
私は、彼の背にそっと手を添えた。
ゲイリー「頼む。俺を……一人にしてくれ。 一人なら、誰かを傷つけることもない……」
〇〇「そんなことできません! ゲイリーさん、どこに行くつもりですか……。 私を助けるために、こんなことに……なってしまったのに」
ゲイリー「……呪いのせいだ。全ては……あの女が!!」
〇〇「やめて、ゲイリーさん……!」
ゲイリーさんの優しい微笑みが思い起こされて、切なさがこみ上げる。
ゲイリー「……俺は……」
〇〇「……いつかきっと、憎しみはなくなります。 そのために私も、これからも傍にいさせてください。 あなたの助けになりたいです」
ゲイリーさんの震える手が伸びてきて、きつく私を抱き寄せた。
ゲイリー「ありがとう……○○……」
絞り出すような声で紡がれた言葉に、私の胸が痛いくらいに締めつけられていた…―。