俺の呪いがすっかり進行してしまい、
○○と二人、人里離れて過ごすようになってからしばらく経ったある日…―。
〇〇「ゲイリーさん……?」
(○○。俺は、もう……)
(きっといつか、おまえのことを……)
来る日も来る日もこの身にかけられた呪いを解く方法が見つけられず、
気持ちの行き場がなくなってしまった俺は……
〇〇「んっ……」
胸の内に秘めたやるせない思いをぶつけるかのように、彼女へと深く口づける。
(この忌々しい呪いさえなければ……)
(おまえに、みじめな暮らしをさせることだって……)
強引に唇を奪う間も、頭の中には様々な思いが渦巻いていた。
すると、その時…―。
(……!)
俺から強引に唇を奪われた彼女が、舌を絡めて応えてくれる。
ゲイリー「○○……」
(おまえは、本当に優しいな……)
長い長いキスの後、俺は名残惜しい気持ちを抑えながら唇を離し……
間近にある○○の目を見つめた後、彼女を深く抱きしめた。
そして……
ゲイリー「○○、俺は……怖いんだ。 いつ呪いに完全に支配されて、おまえや大切な人達のことすらわからなくなるのか……。 その時、俺はおまえを傷つけてしまう…いや、殺してしまうかもしれない」
俺は腕の中の彼女に向け、ぽつりぽつりと呪いへの恐怖を口にした。
〇〇「ゲイリーさん……そんなことは……」
俺の言葉を、○○は優しく否定しようとする。
そんな彼女の言葉を遮るように、俺は彼女の体をさらに強く抱きしめた。
ゲイリー「もうこれ以上、そんなことが考えられないように……。 俺の心をおまえで埋め尽くしておいてくれないか。 敵意も憎悪も、入らないくらいに……」
〇〇「……」
切なく訴える俺に、彼女は少しだけ思案するような素振りを見せた後……
ゆっくりと、首を縦に振った。
(○○……)
ゲイリー「今まで、歯止めが利かなくなるのが怖かった……。 だが、今はどうしてもおまえにふれたい……いいか?」
〇〇「……はい」
(そうか……)
(おまえは、こんなにも情けない俺を受け入れて……)
○○の返事を受けて、俺は彼女の火照った唇を指先でなぞる。
すると彼女の口から甘い声がこぼれ、俺の耳をくすぐった。
(……っ)
少しずつ、俺達二人の息が上がっていく。
ゲイリー「○○……」
俺は彼女の名前を呼びながら、恥ずかしそうに伏せられた顔に手を添えてそっと持ち上げる。
ゲイリー「俺から目を逸らさないでくれ……今も、これからも」
(俺が俺でなくなる、その時まで……)
そうしてしばらく見つめあった後、俺は再び彼女へと口づけた。
〇〇「んっ……」
感情の全てを込め、唇に、そして違う場所へもキスの雨を降らせ……
その度に、俺の心と体は高まっていく。
(……っ)
(駄目だ、もう……)
ゲイリー「……悪い」
〇〇「えっ?」
俺は○○を大きな木に押し付けた。
〇〇「ゲイリーさん……?」
ゲイリー「もう、止められない」
再び恥ずかしそうに顔を伏せる彼女の唇を舌でこじ開け、こぼれ出る吐息さえも奪うかのようにキスをする。
ゲイリー「○○……」
深く口づけた後、俺は彼女の首筋に唇を伝わせ……
○○の膝がくずれ落ちそうになった瞬間、腰元に腕を回し強く抱き寄せた。
〇〇「……っ」
なおも恥じらう彼女の瞳を、真っ直ぐに見つめる。
そうして、限界まで高まりきった心を抑えながら…―。
ゲイリー「俺の心を、おまえで満たしてくれ」
俺は、彼女に嘘偽りない欲望を伝えた。
すると、次の瞬間……
(……!)
(……そうか……)
○○はそっと瞳を閉じて俺に身を委ね、俺はそんな彼女を力強く抱きしめる。
(○○……)
(……必ず、大切にする)
(たとえこの身が呪いに屈する日が来ようとも)
(おまえだけは、必ず……)
そうして俺は、闇の中を彷徨うように生きる中でようやく見つけた柔らかな光を……
腕の中の彼女を、輝く夜空の下で強く強く求め続けたのだった…―。
おわり
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