月最終話 風の音は……

美しく晴れた翌朝…―。

鳥のさえずりが聞こえる。

そっと目を開けると、そこは部屋のベッドの上だった。

(昨日のあれは、夢……?)

そう思うけれど……

枕元に、一枚木の葉が落ちている。

(私、きっと寝てしまって……フリュス君が運んでくれたんだ)

なぜか、胸が小さく音を立てる。

(お礼を言わなきゃ)

私はベッドから跳ね起きると、急いで身支度を整えた。

外に出ると、私は空を見上げながら、フリュス君がいそうな場所を探して回った。

(いない……)

引き返そうとすると、

〇〇「あ……!」

不意に足を引っ張られる。

(倒れる……!)

そう思ったけれど、柔らかな風が、ふわりと私を受け止めてくれた。

フリュス「そんなに上ばかり見て……僕だって、空にばかりいる訳じゃないよ」

隣を見ると、フリュス君が花の中に寝そべっている。

フリュス「何か用?」

〇〇「あ、あの……昨日のお礼を言おうと思って」

何とかそう口にしたけれど、胸が高なって、声がかすれてしまった。

フリュス「お礼?」

〇〇「うん……部屋に運んでくれたでしょ?」

フリュス「あれは、僕が寝ちゃったから」

フリュス君は、少し決まり悪そうに笑う。

そんなフリュス君が可愛くて、私は思わず目を細めた。

〇〇「でも、風邪をひかずに済んだよ」

フリュス「……不思議な子」

〇〇「え?」

フリュス「いっつも笑ってて、楽しそうで。 なんか、君って花吹雪みたいだよね」

〇〇「え……?」

フリュス君が手で風を切ると、いっせいに花びらが舞う。

〇〇「綺麗……」

フリュス「……うん。 綺麗だ」

フリュス君は、私を見下ろすように上半身を起こす。

間近に見下ろされ、私の胸が大きく音を立てた。

(フリュス君、目が真剣……)

(逸らせないよ……)

魅入られたように彼を見つめていると、唇が近付いて……

〇〇「……!」

(キス……!?)

フリュス「……」

吐息が触れるほどに近寄ってから、彼は思い直したように私の膝に頭をのせる。

〇〇「……っ!」

私は彼を膝にのせたまま上半身を起こす。

(心臓の音、聞こえてしまいそう……)

そんな私の顔を見上げながら、フリュス君がイタズラっぽく微笑んだ。

フリュス「……さっき」

〇〇「え?」

フリュス「キスされると思ったでしょう?」

〇〇「そ、それは……」

フリュス君が目を細めて、クスリと笑う。

フリュス「今日もいい天気だね」

答えを口にしたかどうか……頭が真っ白で、わからない。

私はただ、柔らかな風の音を聞いていた…-。

おわり。

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