月SS 優しい風と僕の歌

〇〇ちゃんと一緒に、市街地から戻ってきた後…-。

(今日は楽しかったな~)

木の梢に腰をかけて、僕はさっきの出来事を思い返す。

(〇〇ちゃんは、どう思ったんだろう?)

実はこの位置から、彼女の部屋が見える。

(もう寝ちゃったかな?)

身を乗り出して部屋の中を覗こうと思ったけど、やっぱりやめた。

(女の子の部屋を覗くなんて駄目だよね……)

(でも、〇〇ちゃんともっと話がしたいな~)

彼女のことを考えていると、明るい歌を口ずさみたくなった。

フリュス「~~♪」

すると、その時……

(えっ……!?)

部屋の窓が開き、〇〇ちゃんが顔を出す。

〇〇「フリュス君!」

僕は彼女に手を伸ばし、傍へと引き寄せた。

(もしかして、僕が歌っていたから起こしちゃったのかな?)

心配になって、うかがうように〇〇ちゃんの瞳を覗き込む。

フリュス「もう寝るところだった?」

〇〇「ううん、まだ眠くないから大丈夫だよ」

フリュス「そっか。よかった……」

僕はほっと胸を撫で下ろし、〇〇ちゃんの肩に頭を乗せる。

〇〇「……!」

彼女が、一瞬びくっと体を揺らしたのがわかった。

(さっきは、もっと話したいと思ってたのに……)

(いざ隣に〇〇ちゃんがいると思うと、緊張しちゃうな)

何を話せばいいかわからなくなってしまった僕は、しばらくの間、無言のまま彼女に寄り添っていた。

(あったかい……)

(……我ながらこれは、いいアイディアだったかも)

(これなら、自然に甘えられるもんね)

〇〇ちゃんの温もりに、少しだけ緊張が解ける。

けれど……

(あれ……? ちょっと眠くなってきちゃったかも……)

頑張って保とうとしていた意識が、少しずつ薄れていく。

……

それから、しばらく…-。

フリュス「……?」

目を開けると、静かに寝息を立てる〇〇ちゃんの姿が飛び込んできた。

フリュス「あれ……? 〇〇ちゃん? それに、ここは……」

(……あっ、そっか。僕、あのまま眠っちゃって……)

その時、体に温かくふわりとした感触を感じた。

フリュス「これって……」

(ガウンをかけてくれたんだ……優しいな、〇〇ちゃん)

(でも……このままだと風邪を引いちゃうよね)

僕は風で包み込むようにして、〇〇ちゃんを部屋の中へと連れていく。

フリュス「……よし。これで大丈夫かな」

部屋のベッドに彼女を寝かせ、そっと布団をかける。

(〇〇ちゃんの寝顔、かわいいな……)

すぐに部屋を出て行かなければと思いながらも、僕は彼女の寝顔から目が離せない。

フリュス「……」

〇〇ちゃんの顔に、そっと顔を近づける。

(キス、したいな……)

薄ピンク色の柔らかそうな唇に、手を伸ばしかけて慌てて止める。

(駄目だ、寝ている間にキスをするなんて……)

フリュス「……」

(でも……)

僕はもう一度、〇〇ちゃんの寝顔をじっと見つめた。

(やっぱり、すごくかわいいな)

(それに……寝てるときじゃないと、こんなに顔を近づけられないし……)

僕の心が、忙しなく戦っている。

けれど、その時……

〇〇「う……ん」

フリュス「……!」

〇〇「フリュス君、楽しかったね……」

〇〇ちゃんは幸せそうに微笑むと、再び寝息を立て始めた。

(寝言? 僕の名前を?)

(……ずるいことなんか、しちゃ駄目だ!)

邪な気持ちに罪悪感を抱きながら彼女の柔らかな髪を撫でた後、僕は窓の外へと向かい……

フリュス「おやすみ、〇〇ちゃん」

優しい風に乗って部屋を飛び出し、夜空に向かって明るい歌を口ずさんだのだった…-。

おわり。

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