月5話 切ない抱擁

苦悩に揺れていた彼の瞳が、やがてどこか遠くを見つめるようにぼんやりとし始める。

モルタ「……」

〇〇「モルタさんの心は、どこにありますか……?」

こらえ切れず問いかけると、モルタさんの表情がわずかに歪んだ。

モルタ「私の心は……どこにありません」

〇〇「え……?」

驚きに息を呑む私を、彼の昏い眼差しが見下ろす。

モルタ「あなたが知りたいと願っても、心がどこにあるのか……私自身見つけられないのです。 生と死、大人と子ども……その狭間に取り込まれた、私は実体のない夢のようなもの……。 こんな私は……やはりおかしいですよね」

〇〇「……っ!」

モルタさんは苦しげな声でつぶやくと、私の服をぎゅっと握った。

すがるように掴まれた手の力に、胸に突き刺さるような痛みが走る。

(そんなこと……)

私は、モルタさんの手に自分の手を重ねた。

〇〇「……いいえ」

モルタさんを安心させるように、私はゆっくりと首を横に振った。

〇〇「……それが、モルタさんなんだと思います」

(わかっていたのに……私は、答えを求めすぎてしまったんだ)

彼を追い詰めるようなことをしてしまい、罪悪感に苛まれる。

〇〇「私は……そんなモルタさんの傍にいたいと願っています」

私の返事を聞いたモルタさんは、切なげな笑みを唇に乗せた。

モルタ「ありがとうございます」

私の服を掴んでいた彼の手が、ゆっくりと背中に回される。

まるで、壊れ物を扱うかのように抱きしめられて…-。

モルタ「あなたは……あなただけは、私の答えを否定しない。どんな答えにも、応えてくれる。 それに私がどれほど、救われているか…-」

穏やかな声なのに、それは悲痛な叫びに聞こえた。

(ごめんなさい……)

私は彼の背に手を回し、ぎゅっと抱きしめ返すのだった…-。

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