月SS ピンク色の珊瑚

〇〇さんが初めて珊瑚の国を訪れてから、しばらく…-。

(〇〇さん……)

待ち合わせ時間よりも30分近く早く来てしまった僕は、海を眺めながら彼女のことを思い返す。

コライユ「なんだか、ドキドキするな……」

久しぶりに会う彼女に、胸がうるさいぐらい高鳴る。

―――――

コライユ『……〇〇さんには、ただ、またここに来て欲しいな。 何年後も、何十年後だって……僕は必ずこの場所を守り通していてみせるから』

―――――

珊瑚を綺麗に彩るという妖しい薬……

実際には魚を弱らせて捕獲するための薬を持ってきた怪しい男を追い返した後、僕はずっと、自分なりに国を守ってきた。

(この国の王子として、精一杯頑張ってきたつもりだよ)

珊瑚や、そこに生息する魚達……

いずれも彼女が帰ってしまった後と変わらず、海を美しく彩っていた。

コライユ「〇〇さん、喜んでくれるといいな。 それに…-」

??「あれ? コライユくん?」

コライユ「え? あ……〇〇さん!」

僕は砂浜から立ち上がり、〇〇さんへと駆け寄った。

コライユ「久しぶりだね! 元気だった?」

〇〇「うん。コライユくんも、元気そうでよかった」

明るい太陽の下で、僕達は手を取り合って再会を喜ぶ。

〇〇「待たせちゃったみたいでごめんね。私も、結構早く来たつもりだったんだけど……」

コライユ「ううん、大丈夫だよ! 楽しみすぎて僕が勝手に早く来ちゃっただけだし」

〇〇「そうだったんだね。今日が招待してくれて本当にありがとう。 新しい珊瑚、すごく楽しみだな」

コライユ「うん! びっくりするぐらい綺麗だから、楽しみにしててね!」

城から少し離れたところにある秘密の場所に珊瑚を植えた僕は、『久しぶりに一緒に珊瑚を眺めよう』と、彼女に手紙を送っていた。

コライユ「よーし、それじゃあ早速行こうか」

〇〇「うん」

〇〇さんが、僕に右手を差し出す。

(手……か)

僕と手を繋いでいれば、海の中でも息ができる。

前にも、彼女と手を繋いで海中散歩をしたことがあったけど……

コライユ「ごめんね。今日は、それじゃあ足りないんだ」

〇〇「……っ!?」

僕は〇〇さんの手を引っ張って、彼女の唇を奪う。

(柔らかい……それに)

コライユ「へへ、幸せ♪」

〇〇「コライユくん、今の……」

驚いたように目を丸くする〇〇さんに、僕はにっこりと微笑みかける。

コライユ「実はね。今日行くところは少し深い場所にあるんだ。 だから、手を繋ぐだけじゃちょっと足りなくて……」

〇〇「そ、そっか。前に言ってたね。深いところに行くには、その……」

コライユ「ディープなキスが必要だって?」

〇〇「……っ」

〇〇さんが、顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。

(かわいいなぁ……)

(やっぱり、深いところに植えて大正解だったよ)

コライユ「実はね。そこにピンク色の珊瑚を植えてみたんだ。 ……〇〇さんのために」

〇〇「私のため?」

コライユ「そうだよ。珊瑚の欠片はね、お守りとして使われることがあるんだけど……。 ピンク色の珊瑚には『純愛』っていう意味があるんだ」

僕は、〇〇さんをまっすぐに見つめる。

コライユ「意味、わかるよね?」

〇〇「コライユくん……」

〇〇さんの頬が、今まで見たことがないぐらい真っ赤に染まる。

そして……

〇〇「……うん」

コライユ「そっか……よかった。 それじゃあ、行こうか」

小さく頷いてくれた〇〇さんの手を取って……僕は……

(君が、大好きだよ)

そんな想いを込めながら、もう一度甘く深いキスを交わしたのだった…-。

おわり。  

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